研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科植物グローバル教育プロジェクトの稲田のりこ特任准教授が公益財団法人三菱財団の平成25年度三菱財団自然科学助成の対象者に選ばれました。
バイオサイエンス研究科植物グローバル教育プロジェクトの稲田のりこ特任准教授が公益財団法人三菱財団 (http://www.mitsubishi-zaidan.jp/) の平成25年度自然科学研究助成の対象者に選ばれました。本助成では、自然科学のすべての分野にかかわる独創的かつ先駆的研究とともに、助成の分野にとらわれず、すぐれた着想で新しい領域を開拓する萌芽的研究に対して支援が行われています。
助成受託コメント
この度、三菱財団から研究を支援していただけることになり、大変嬉しく思っています。私は、東京大学の共同研究者とともに、数年前から細胞内の温度を可視化する技術の開発に取り組み、昨年 Nature Communications にその成果を発表しました。現在は、細胞内温度可視化技術について更なる開発を試みるとともに、その技術を用いた細胞機能の解明に関する研究を進めています。今回の三菱財団からの支援をもとにして、細胞温度可視化の手法を植物に応用し、私のもう一つの研究テーマである植物免疫応答の機構について、局所的温度変化という観点から明らかにしたいと考えています。
助成受託研究テーマ
植物免疫応答においてサリチル酸は、細胞内・細胞間シグナル伝達に寄与する重要な植物ホルモンです。しかしながら、そのようなシグナル伝達におけるサリチル酸の実際の作用機序は明らかにされていませんでした。本研究は、病原体感染によって誘導されたサリチル酸が、感染細胞における熱発生に機能し、それによって生み出された局所的熱勾配そのものが、細胞内・細胞間のシグナルとして機能しているのではないか、との仮説に立脚し、タバコ培養細胞を用いた細胞内温度イメージングと顕微細胞操作によりこれを検証します。この研究は、植物免疫機構の解明につながる基盤研究、また、温度という新しい視点を基礎生物学研究に導入する基盤研究としての意義を持っています。
関連論文
- Inada, N. and Uchiyama, S. : What are the methods and benefits of imaging temperature distribution inside living cells? Imaging in Medicine, 5, 303-305 (2013)
- 稲田のりこ、岡部弘基、林晃之、内山聖一 : 新規蛍光プローブと蛍光寿命イメージング顕微鏡を用いた細胞内温度計測イメージング Plant Morphology, 25, 55-60 (2013)
- Uchiyama, S., Kimura, K., Gota, C., Okabe, K., Kawamoto, K., Inada, N., Yoshihara, T. and Tobita, S. : Environment-sensitive fluorophores with Benzothiadiazole and Benzoselenadiazole structures as candidate components of a fluorescent polymeric thermometer. Chem. Eur. J., 18, 9552-9563 (2012)
- 内山聖一、岡部弘基、稲田のりこ: 蛍光寿命測定による細胞内温度分布イメージング 光化学, 43, 24-27 (2012)
- Okabe, K., Inada, N., Gota, C., Harada, Y., Funatsu, T. and Uchiyama, S. : Intracellular temperature mapping with a fluorescent polymeric thermometer and fluorescence imaging microscopy. Nat. Commun., 3, 705 (2012)
(2013年08月06日掲載)