NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

濱田聡さんが、日本植物病理学会学生優秀発表賞を受賞

日本植物病理学会学生優秀発表賞とは、日本植物病理学会学生会員のポスター発表の中から優れた研究発表を選んで表彰するものです。

受賞コメント

我々はイネへの耐病性の付与に重要なOsRac1というタンパク質を解析してきました。今回、「活性型OsRac1は高分子量複合体(Defensome)を形成する」を表題にした私の発表が日本植物病理学会学生優秀発表賞を受賞したことは、植物分子遺伝学講座の皆様やバイオサイエンス研究科の先生方の御助言、御協力があったからこそであると思います。心から感謝いたします。今後、さらによい研究を進め、植物病理学の発展のために尽力していきたいと思います。

受賞内容

イネにおいて、低分子量Gタンパク質であるOsRac1は植物免疫反応を制御していることが明らかにされています。我々のグループはこれまでにOsRac1の相互作用因子を単離し、免疫シグナリングのネットワークを解明してきました。この免疫シグナリングのネットワークをDefensomeモデルと呼び、研究を行っています。Defensomeモデル中には、免疫受容体、シャペロン分子、足場タンパク質、OsRac1、OsRac1の下流で機能する分子などが含まれます。今回、OsRac1がイネ細胞内でどの様なタンパク質の複合体として存在しているのかを解明していきました。

細胞内のタンパク質複合体を分離できるゲルろ過を使用し、解析した結果、恒常活性型のOsRac1は、Defensomeモデルの構成因子であるHSP90、HSP70、Hop/Sti1a、SGT1といったシャペロン分子と生体内で複合体を形成している可能性が示唆されました。この複合体をDefensome複合体としました。さらに、野生型のOsRac1は植物免疫反応を誘導するキチン処理により、このDefensome複合体を形成し活性化していくことを確認しました。

以上のことは、活性化したOsRac1がシャペロン分子等とDefensome複合体を形成し、植物免疫シグナルを下流に伝達していくという可能性を示唆しています。

(2010年07月01日掲載)

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