研究成果の紹介
微生物インタラクション研究室の髙橋空良さん(博士後期課程2年)が「第16回日本醸造学会若手シンポジウム」において「醸造ベーシックサイエンス賞(ベストポスター賞)」を受賞
微生物インタラクション研究室の髙橋空良さん(博士後期課程2年)が「第16回日本醸造学会若手シンポジウム」において「醸造ベーシックサイエンス賞(ベストポスター賞)」を受賞しました(2024年10月9日)。
受賞のコメント
この度「第16回日本醸造学会若手シンポジウム」において「醸造ベーシックサイエンス賞(ベストポスター賞)」を受賞することができ、大変光栄に思います。この賞を頂けたのは、日頃よりご指導下さっている渡辺大輔准教授をはじめ、これまで有意義な議論を交わして下さった多くの方々のおかげです。心より感謝申し上げます。今後、この経験を糧に「労を惜しまず、時間を惜しめ」の精神で、更に研究を発展させ、酵母のアルコール発酵に関する有意義な知見が得られるように精進したいと思います。
受賞研究課題名
ワイン酵母の潜在的な高発酵性に寄与する細胞壁欠陥とその原因遺伝子
酵母の高発酵性機構については清酒酵母を中心に解析され、細胞壁の主要構成成分である1,3-β-グルカン合成の促進を介したアルコール発酵の阻害因子である Rim15p が見いだされました。その一方で、酵母が最も発酵力を発揮できる並行複発酵条件で、高発酵性を示すワイン酵母を探索したところ、清酒酵母と同等の高発酵性(約18%)を示すワイン酵母株として OC-2株 と W-3 株を見出していました。そこで本研究では、ワイン酵母の比較ゲノム解析に基づく原因遺伝子の探索を行いました。
全ゲノム解析の結果、OC-2株ではRIM15遺伝子上にナンセンス変異(Arg223*)が存在しており、高発酵性に寄与していることが明らかになりました。その一方で、W-3株ではRIM15遺伝子上に明らかな機能欠失変異は存在していませんでしたが、Rim15p の機能が欠損した他の株と同様に細胞壁撹乱剤である Calcofluor White に対して超感受性を示しました。
次に、高発酵性-低発酵性ワイン酵母間の比較解析を行ない、計20個の候補遺伝子について発酵試験を行いました。その結果、FPR4およびGIT1遺伝子の推定上の機能欠失変異が W-3 株に存在し、実験室酵母においてこれらの遺伝子を破壊すると Calcofluor White 感受性と発酵速度が共に上昇することを見出しました。以上の結果から、ワイン酵母の高発酵性と細胞壁欠陥の関連が明らかとなり、細胞壁合成を介したアルコール発酵制御に関する新たな知見が得られました。
(本研究は、JST SPRINGおよび笹川科学研究助成の支援を受けて実施しました。)
関連資料
髙橋, 数岡: 清酒醸造に適したワイン酵母株の探索とその醸造特性, 日本醸造協会誌, 118, 11, 767―775(2023)
日本醸造学会若手の会: https://jozowakate.jimdofree.com/
JST SPRING: https://www.jst.go.jp/jisedai/spring/
笹川科学研究助成: https://www.jss.or.jp/ikusei/sasakawa/
【微生物インタラクション研究室】
研究室紹介ページ:https://bsw3.naist.jp/courses/courses313.html
研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/microbial_interaction/
(2024年10月17日掲載)