NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究成果の紹介

微生物インタラクション研究室の髙橋空良さん(博士後期課程2年)が公益財団法人日本科学協会の2024年度笹川科学研究助成対象者に選ばれました。

微生物インタラクション研究室の髙橋空良さん(博士後期課程2年)が公益財団法人日本科学協会の2024年度笹川科学研究助成対象者に選ばれました。

助成受託コメント

「笹川科学研究助成」は課題設定が独創性・萌芽性を有し、発想や着眼点が従来にない若手研究を支援しています。
酵母におけるエタノール生産(アルコール発酵)は、清酒やワイン、ビールといった酒類製造業において必要不可欠です。しかしながら、様々な代謝・シグナル伝達経路とリンクしていることに加え、発酵力が変化した変異株を取得することも容易ではなく、酵母のエタノール高生産メカニズムについては未解明な箇所が多々あります。
今回頂いた研究助成金を有効活用し、産業酵母であるワイン酵母を題材にして、我々に馴染み深くも複雑な生命現象の解明にブレークスルーを起こし、応用微生物学および発酵科学分野の発展に貢献できるよう、本研究を邁進してまいります。

研究助成内容

清酒は並行複発酵と呼ばれる独自の発酵形式によって、20%近い高アルコ―ル度数を有することから、その製造に用いられる清酒酵母は他の出芽酵母と異なり、類まれなる高発酵性を有すると信じられてきました。そのため、酵母のアルコール発酵制御機構についてはこれまで清酒酵母を中心に解析され、アルコール発酵の主要な阻害因子として働くPASプロテインキナーゼRim15pが発見されました。
しかしながら、私は異なる発酵環境での発酵力を比較した議論に疑問を抱き、ワイン酵母を用いた清酒醸造試験を行ったところ、清酒酵母と同等の高いエタノール生産性を示すワイン酵母株が多数存在することを見出していました。ワイン製造におけるエタノール収率は14%程度に留まるため、ワイン酵母はワイン製造環境では、発酵力のポテンシャルを十分に発揮できていなかったと考えられます。
本研究では、このワイン酵母における潜在的なエタノール高生産メカニズムの解析を行い、従来見落とされてきた新規のアルコール発酵制御機構を明らかにします。

関連資料

Watanabe et al., Rational design of alcoholic fermentation targeting extracellular carbon. npj Sci Food, 7, 37 (2023)
・髙橋, 数岡: 清酒醸造に適したワイン酵母株の探索とその醸造特性, 日本醸造協会誌, 118, 11, 767―775(2023)

公益財団法人日本科学協会
https://www.jss.or.jp/

【微生物インタラクション研究室】

研究室紹介ページ:https://bsw3.naist.jp/courses/courses313.html
研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/microbial_interaction/

 

 

(2024年04月30日掲載)

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