研究成果の紹介
ストレス微生物科学研究室の高木博史教授が公益社団法人日本農芸化学会の「2020年度日本農芸化学会賞」を受賞
ストレス微生物科学研究室の高木博史教授が、公益社団法人日本農芸化学会(会員約10,400名)の「2020年度日本農芸化学会賞」受賞者に決定しました(令和2年1月10日)。授賞式・受賞講演は令和2年3月25日に開催予定です。本賞は、農芸化学の分野で、学術上又は産業上、特に優秀な研究業績をおさめた正会員に授与されるものです。
日本農芸化学会ホームページ:
https://www.jsbba.or.jp/about/awards/about_awards_jsbba.html
業績論文標題
「酵母のストレス耐性に関する新規な分子機構と高機能開発」
受賞コメント
この度は栄誉ある「日本農芸化学会賞」をいただき、身に余る光栄です。受賞対象の研究は福井県立大学および本学で行われたものであり、ご指導・ご協力いただいた研究室の教員、スタッフ、学生、および多くの国内外の産学官共同研究の皆様に心より厚くお礼申し上げます。また、当方を微生物研究に導いていただき、長い間ご支援いただいた味の素(株)に深謝します。これまで常に「基礎・応用のバランス」を意識した研究に取り組んできましたが、実際に企業や地方公立大を経験したことが、多くの企業との共同研究を行う上で大変役立ちました。一方で、科研費の会議や基礎系の学会などでは、基礎医学系や理学系の先生方と多数知り合うことができたのも大きな財産です。今後は当方のような企業出身の人の目標にもなれるよう、自分なりに精一杯頑張りたいと思います。今後もお世話になった方々や酵母への感謝を忘れず、「今が故郷」の気持ちで、ユニークな研究を目指したいと思います。
受賞内容
微生物は環境からの様々なストレスに応答し、細胞内の遺伝子発現、タンパク質間相互作用・酵素活性、代謝経路などを巧妙に制御することで種々の機能を発揮しながら、地球上の激しい環境変化に適応してきた。一方で、微生物による発酵生産過程は細胞にとってストレス環境であり、温度・冷凍・乾燥・浸透圧・pH・有機溶媒・異常タンパク質蓄積などに曝されている。連続的・複合的なストレスの負荷により、細胞の生育は阻害され、細胞死に至ることが多い。そのため、微生物の有用機能(エタノール、炭酸ガス、味・風味成分、アミノ酸、酵素などの生産)が制限され、発酵生産力にも限界がある。したがって、発酵・醸造食品やバイオ燃料、有用物質の生産性向上・高付加価値化には、細胞の高度なストレス耐性能が必要である。受賞者は高等生物のモデル生物として、また様々な発酵化学産業において重要な酵母Saccharomyces cerevisiaeを主な研究対象とし、実験室酵母に見出した細胞の新しいストレス耐性機構を解析してきた。また、得られた基盤的知見を産業酵母の高機能開発に資することで、実用株の育種への応用を試みてきた。これまでに、産官学連携の推進による社会貢献を常に意識した取り組みを含め、農芸化学会賞に相応しい業績をあげている。
【ストレス微生物科学研究室】
研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/
(2020年01月31日掲載)