研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の渡辺大輔助教が公益社団法人日本農芸化学会より農芸化学奨励賞を受賞
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の渡辺大輔助教が公益社団法人日本農芸化学会より農芸化学奨励賞を受賞しました。 本賞は、農芸化学の進歩に寄与するすぐれた研究をなし、なお将来の発展を期待し得る正会員に授与されるものです。
受賞コメント
この度は、このような栄えある賞をいただくことになりまして大変光栄に存じます。本研究内容は、学生時代から一貫して取り組んできた酵母に関する研究全体に対するもので、私の恩師である東京大学・大矢禎一教授、酒類総合研究所・下飯仁教授(現・岩手大学)、そして現在お世話になっている当学・高木博史教授による熱心なご指導・ご助力の賜物です。これらの先生方、そして、お一人お一人の名前を挙げることはできませんが、本研究に携わった全ての先生方、先輩方、スタッフ・学生の皆様、共同研究者の皆様に心から御礼申し上げます。特に、当学に赴任後は、ストレス微生物科学研究室の一員として、高木博史教授、大津厳生助教、研究技術員の杉本幸子さん、秘書の山田博美さんをはじめ、博士研究員・学生の皆様と一緒に、なんだかんだで毎日楽しく研究をさせていただいていることに幸せを感じています。まだまだ未熟者とは思いますが、これからも、この受賞にふさわしい研究者になれますように研究に邁進していく所存です。
受賞内容
『酵母における環境応答と代謝調節に関する分子遺伝学的研究とその応用 』
細胞は、外界の栄養環境を感知し、そのシグナルに応答して遺伝子発現を制御し、代謝のリモデリングを行うことによって、自らにとって必要なエネルギーや物
質を生産しています。したがって、環境応答と代謝調節は、細胞の生存・生育にとって最も根幹を成し、細胞を「生命」たらしめる必須な機能の一つであると考
えています。私は,真核モデル生物である出芽酵母Saccharomyces
cerevisiaeを主に用いて、その全体像の解明に挑むと共に、得られた知見の産業への応用を目指して研究を進めてきました。その結果として、現在に至るまでに、
① 酵母の細胞形態形成シグナル伝達経路に関するゲノムワイド解析とその応用
② 酵母のアルコール発酵調節因子の同定とその応用
③ 酵母ユビキチンリガーゼを介した環境応答に関する分子基盤の解析とその応用
に関する研究成果を生み出すことができました。酵母は、先史時代から人類に活用されてきた最も身近な微生物であるにも関わらず、「酵母の細胞はなぜ丸いの
か?」、「酵母の発酵力を高めるにはどうすれば良いのか?」、「単細胞生物である酵母はどのように傷害を癒すのか?」といった素朴な疑問の多くが未解決の
まま残されていることに気付きました。これらの疑問に対する解答を探究する中で,酵母の未知なる可能性が開拓され、酵母機能を活用した産業利用の促進・効
率化に資する有用な知見に辿り着くことができたと考えています。
公益社団法人日本農芸化学会 ホームページ
http://www.jsbba.or.jp/
【ストレス微生物科学】
研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/
(2016年02月10日掲載)