バイオサイエンス研究科動物細胞工学研究室の大古殿 美加さん(博士後期課程1年)が「平成27年度 第2回 新生鎖の生物学 班会議」より優秀ポスター発表賞を受賞
バイオサイエンス研究科動物細胞工学研究室の大古殿 美加さん(博士後期課程1年)が「平成27年度 第2回 新生鎖の生物学 班会議」より優秀ポスター発表賞を受賞
受賞のコメント
「平成27年度第2回新生鎖の生物学班会議」において「優秀ポスター発表賞」を受賞する
ことができ大変嬉しく思います. この賞を頂けたのは, 日頃から研究を支えていただいている河野憲二教授, 木俣行雄准教授をはじめ,OBを含めた研究室のみなさまのお蔭です. 心より感謝申し上げます. 特に日頃の研究を指導して頂いている D3の曽川愛守榮さんには深く感謝致します. この受賞を励みに, 今後さらに研究を発展させて, 社会に貢献できるよう精進してまいりたいと思います.
受賞時の発表内容
「XBP1u タンパク質の翻訳停止機構の解析」
mRNA の翻訳はタンパク質製造装置であるリボソームが mRNA 上をスムーズに進行することで行われる. しかし, 近年の研究により翻訳が一時的に停止する「翻訳停止」という現象が見出された. 当研究室においては, 哺乳動物細胞の転写因子XBP1u のC 末端で翻訳停止が起こることが発見され,小胞体内に蓄積した構造異常タンパク質を処理する小胞体ストレス応答に関与する「機能性翻訳停止」であることが明らかになっている. しかし,詳細な機構については不明であるため, XBP1u の翻訳停止機構の解明を目指し, 翻訳停止に関与する因子を探索するための実験系確立を目指した.
私達は, 翻訳停止が翻訳効率を低下させる性質を利用して翻訳停止の強弱を蛍光強度の違いにより検出する方法を考案した. 材料として, XBP1u の翻訳停止配列の上流に緑色蛍光タンパク質EGFP, 下流に赤色蛍光タンパク質mCherry
の遺伝子を連結した融合遺伝子 EAC (EGFP-Arrest
sequence-mCherry) を用い, 哺乳動物細胞(HeLa 細胞) で一過的に発現させた後, FACSにより細胞の蛍光測定を行った.
XBP1u の野生型翻訳停止と翻訳停止が強い変異体と弱い変異体をそれぞれ解析し, 結果を比較したところ, 翻訳停止が強い程翻訳効率の低下により発現量が減少することから,緑色蛍光と赤色蛍光が弱く, 且つEAC の全長に対して翻訳停止中の産物が多くなるため, 赤色蛍光に比べて緑色蛍光が強くなる細胞集団が観察された.
ヒト一倍体細胞
(KBM7) における EAC 安定発現株を用いた解析でも同様の結果が得られているため, 今後はこの細胞を用いて, Gene
trap 法によるランダムな遺伝子ノックアウトを行うことにより XBP1u
の翻訳停止に関与する因子の同定を行いたいと考えている.
新学術領域研究「新生鎖の生物学」
http://www.pharm.tohoku.ac.jp/nascentbiology/
関連する資料
1. Yanagitani
K.,Kimata Y.,Kadokura
H. and Kohno K. (2011) Translational pausing
ensures membrane targeting and cytoplasmic splicing of XBP1u mRNA. Science. 4; 331 (6017), 586-9.
【動物細胞工学】
研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses207.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/kouno/
(2015年11月25日掲載)
奈良先端科学技術大学院大学