研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の吉岡直哉さん(博士前期課程1年)が日本醸造学会若手の会よりベストポスター賞(醸造ベーシックサイエンス賞)を受賞
バイオサイエンス研究科ストレス微生物科学研究室の吉岡直哉さん(博士前期課程1年)が日本醸造学会若手の会よりベストポスター賞(醸造ベーシックサイエンス賞)を受賞
受賞のコメント
この度、「第7回日本醸造学会若手シンポジウム」において「醸造ベーシックサイエンス賞」を受賞することができました。ここに至るまで、高木博史教授をはじめ、多くの皆様に大変お世話になりました。特に、日頃の実験や今回のポスター製作において寝る間も惜しんで指導していただいた渡辺大輔助教に深く感謝いたします。 今回の受賞でお世話になった方々に少しでも恩返しできたらと思っています。この貴重な経験を今後の研究に生かし、より良い成果を上げていきたいと思います。
受賞した発表の内容
「出芽酵母の細胞壁合成とアルコール発酵に関する研究」
我々は現在までに、清酒醸造に広く用いられる清酒酵母に特異的なストレス応答に中心的な役割を果たすRim15プロテインキナーゼの機能欠損を見出しており、この機能欠損がグルコース同化の抑制を介して高い発酵力を生み出す主要な原因の一つであることを明らかにしています1, 2)。本研究では、酵母の主要なグルコース同化経路であるトレハロース、グリコーゲン、および細胞壁の主要成分である1,3-β-グルカンの合成経路とアルコール発酵との関係に着目し、研究を進めてきました。その結果、1,3-β-グルカンの合成抑制のみがアルコール発酵速度を特異的に向上させるという非常に興味深い結果が得られました。また、1,3-β-グルカン合成酵素の発現調節に重要であるCWI(Cell Wall Integrity)経路におけるMAPKカスケードのリン酸化が清酒酵母では抑制されていたことから、清酒酵母ではRim15を介した1,3-β-グルカン合成の基質(UDP-グルコース)の生産と、CWI経路を介した1,3-β-グルカン合成酵素の発現誘導の両方に欠損を有しており、そのことが高い発酵力の原因であると結論づけられました。
日本醸造学会若手の会
http://jozowakate.mysterious.jp/wakate.htm
関連する資料
1. Watanabe D, Araki Y, Zhou Y, Maeya N, Akao T,
Shimoi H; A loss-of-function mutation in the PAS kinase Rim15p is related to
defective quiescence entry and high fermentation rates of Saccharomyces
cerevisiae sake yeast strains. Appl. Environ. Microbiol. 78, 4008-4016 (2012)
2. Watanabe D, Takagi H, Shimoi H; Mechanism of high
alcoholic fermentation ability of sake yeast. In “Stress Biology of Yeasts and
Fungi: Application for Industrial Brewing and Fermentation” (Springer) pp.
59-76 (2015)
【ストレス微生物科学】
研究室紹介ページ:http://bsw3.naist.jp/courses/courses305.html
研究室ホームページ:http://bsw3.naist.jp/takagi/
(2015年10月15日掲載)