研究成果の紹介
北野健助教が稲盛財団から平成19年度自然科学系研究助成を受賞しました
構造生物学講座の北野健助教が、(財)稲盛財団から平成19年度自然科学系研究助成対象者に選出されました。稲盛財団の研究助成は、自然科学、人文・社会科学の幅広い分野の研究活動に助成されています。平成19年度の研究助成対象者は、全国国立大学法人、公立総合大学、私立大学(選抜)、国立大学共同利用機関法人に所属する研究者からの申請を研究助成選考委員会において選考し、3月9日、理事会・評議員会で決定され、助成金は平成19年4月22日(日)、ウェスティン都ホテル京都での助成金贈呈式にて贈呈されました。
助成受託のコメント
この度は稲盛財団 研究助成に選定して頂き、誠に光栄に思います。ウェルナー早老症タンパク質の構造研究は本学においてゼロからスタートさせた研究で、二年間の試行錯誤の末やっとかたちになってきたものであります。これまでの苦労を評価頂けたことを心より嬉しく思います。研究を始めるに当たってご支援賜りました(株)ジーンケア研究所の古市泰宏先生、嶋本 顕先生、ならびに本学構造生物学講座の箱嶋敏雄教授に深く感謝いたします。
助成受託研究テーマ
「ウェルナー早老症タンパク質によるゲノム維持機構の構造研究」
早老症は、文字通り若くして老化が急速に進行する病気です。いくつかのタイプが知られていますが、いずれもゲノムDNAを守るタンパク質の変異が原因であることから、細胞のゲノム維持機構の破綻が急速な老化に繋がると考えられています。なかでもウェルナー症候群は日本人に特に多い遺伝病で、世界的に70%以上もの症例を日本人患者が占めています。実際、日本では数百人に一人がウェルナー症の潜在的な保因者、すなわち発症はしなくても遺伝子変異を有すると推定されています。確率的には高くありませんが保因者同士の婚姻によって産まれた子供のうち何人かは早老症を発症し、若くして老化と戦わなくてはなりません。ウェルナー症の治療法はまだありませんが、発症の原因はウェルナータンパク質(WRN)の機能欠損であることが突き止められています。本研究では日本が誇る大型放射光施設SPring-8の最先端技術を駆使して、WRNの分子立体構造を原子分解能で明らかにする研究を進めます。
図の説明
上:早老症の種類とその原因となる変異タンパク質。
中:ウェルナー症ではWRNというたった一つのタンパク質が欠損することによって早期老化が引き起こされます。
下:本学において結晶化に成功したWRN C末端ドメインの結晶と、放射光実験の結果得られたタンパク質電子密度マップ。
関連する論文
- Kitano, K., Yoshihara, N., Hakoshima, T. (2007). Crystal structure of the HRDC domain of human Werner syndrome protein, WRN. J. Biol. Chem., 282, 2717-2728.
(2007年07月01日掲載)