植物成長制御 (梅田研究室)
- 教授
- 梅田 正明
- 助教
- 安喜 史織
- Zhang Ye
- 研究室HP
- https://bsw3.naist.jp/umeda/
Bio Discovery Session NAIST Edge BIO(第2回、第27回)
研究・教育の概要
植物は一生を通じて器官形成を続けます。これは、胚発生初期に器官形成を終える動物とは大きく異なる特徴です。私達は、植物の器官形成の元となる幹細胞を維持・再生する仕組み、環境ストレスに応答した細胞分裂の制御機構、DNA倍加により器官サイズを大きくするメカニズムについて解析し、植物が変動する環境下でどのように成長を続けられるのか、その背景にある制御基盤を理解しようとしています。これらの研究は、植物特有の生存・成長様式を理解するのに役立つだけでなく、食料やバイオマスの増産に繋がるような植物の成長改変技術を開発する上でも非常に重要です。
主な研究テーマ
植物幹細胞の維持・再生機構
植物は体内に多能性幹細胞を絶やさない仕組みを有しており、組織再生の際には新たな幹細胞を創り出します。私達は、幹細胞が死滅した際に幹細胞を再生するメカニズムについて研究しています(図1)。また、幹細胞のゲノム恒常性を維持する仕組みとして、セントロメア周辺のクロマチン凝縮に着目して研究を進めています。いずれも植物ホルモンが重要な役割をもつことが明らかになりつつあり、ホルモンによる細胞分裂やクロマチン構造の制御に焦点をあてて研究を進めています。
環境ストレスに応答した細胞分裂の停止機構
移動することができない植物は、環境ストレスに曝されると細胞分裂を一時停止させ、ストレス対処にエネルギーを消費する戦略をとります。私達は、植物が様々な環境ストレスに応答して細胞周期をG2期で停止させる仕組みを発見しました(図2)。このチェックポイント機構を発動させるシグナル伝達経路を解明することにより、野外で複合的なストレスに曝されても成長を止めない、スーパーストレス耐性植物を作出しようとしています。
DNA倍加の誘導機構
多くの植物は、細胞分裂を終えた後にDNA倍加(DNA複製のみを繰り返すことでDNA量を倍々に増やす現象)を起こし、細胞・器官サイズを大きくします。最近の私達の研究により、クロマチン構造の変化がDNA倍加誘導に重要であることが明らかになってきました(図3)。そこで、クロマチン動態とDNA倍加との関連性について解析するとともに、樹木のようなDNA倍加を起こさない植物種でDNA倍加を誘発する技術を開発し、地球規模の食料・バイオマスの増産に貢献したいと考えています。
主な発表論文・著作
- Takahashi N. et al., J. Exp. Bot., 75, 1364-1375, 2024
- Takatsuka H. et al., J. Exp. Bot., 74, 3579-3594, 2023
- Takahashi N. et al., Sci. Adv., 7, eabg0993, 2021
- Shimotohno A. et al., Annu. Rev. Plant Biol., 72, 273-296, 2021
- Umeda M. et al., Plant J., 106, 326-335, 2021
- Watanabe S. et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 117, 31500-31509, 2020
- Umeda M. et al., Curr. Opin. Plant Biol., 51, 1-6, 2019
- Takahashi N. et al., eLife, 8, e43944, 2019
- Takatsuka H. et al., Plant Physiol., 178, 1130-1141, 2018
- Ogita N. et al., Plant J., 94, 439-453, 2018
- Chen P. et al., Nature Commun., 8, 635, 2017
- Kobayashi K. et al., EMBO J., 34, 1992-2007, 2015
- Yin K. et al., Plant J., 80, 541-552, 2014
- Takahashi N. et al., Curr. Biol., 23, 1812-1817, 2013
- Yoshiyama K.O. et al., EMBO Rep., 14, 817-822, 2013