遺伝子発現制御 (別所研究室)
- 教授
- 別所 康全
- 准教授
- 松井 貴輝
- 助教
- 秋山 隆太郎
- 北川 教弘
- 稲葉 泰子
- 研究室HP
- https://sites.google.com/view/bessho-lab-top
研究・教育の概要
脊椎動物をはじめとする多細胞生物のからだは、遺伝子(ゲノム)/代謝/細胞/細胞社会/器官/個体といった階層構造をとっています(図1)。細胞外の情報をもとに、細胞は遺伝子・代謝ネットワークを使ってゲノム情報を読み出し、その結果として分化や分裂、運動などの細胞のふるまいが制御されます。細胞は相互に情報交換を行ない、細胞集団の大きさ、細胞数、かたちなどを感知し、遺伝子・代謝ネットワークのレベルに情報をフィードバックすることによって、形づくりに代表される高次生命機能を営んでいると考えられています。私たちは、遺伝子・代謝ネットワーク→細胞のふるまいの方向だけでなく、細胞のふるまい→遺伝子・代謝ネットワークの方向の制御など階層を超えたフィードバック制御を含んだ生物の形づくりのシステムを理解することを目指しています。
主な研究テーマ
体節形成過程をモデル系とした生物時計の研究
脊椎動物の発生中期の構造物である“体節”は椎骨などの繰り返し構造のもとになっており、周期的な分節化によってつくられます。この周期性は遺伝子発現の振動の周期を使って制御されています。私たちはこの生物時計の分子メカニズムを明らかにしてきました(図2)。個々の細胞の遺伝子発現の振動、すなわち生物時計は細胞間で同調して働いています。私たちは細胞が相互に作用して生物時計を同調させるメカニズムを明らかにしようとしています。遺伝子変異などでこのメカニズムが破綻すると奇形の発生率が高まると考えられるので、奇形を予防する方法の開発につながります。
発生過程の細胞移動に注目した細胞の社会的ふるまいの研究
動物の発生過程では、細胞は複雑に移動し、相互に作用しながら集合し、正確な大きさ、かたちを持つ組織や器官が形成されます。ゼブラフィッシュの胚は透明であることなどから細胞移動やシグナル活性などのライブイメージングに適した系です。私たちはゼブラフィッシュを用いて細胞の社会的ふるまいを明らかにし、組織や器官のかたちと大きさが決定される原理の解明に取り組んでいます(図3)。特に、水流や水圧を感知する側線器官の発生と再生、内蔵のもとになる内胚葉細胞の集団移動、表皮が傷を受けたあとに傷を修復する仕組み、左右軸を決定するクッペル胞の発生の仕組みと大きさの制御など、多くの生命現象の仕組みを明らかにすることに取り組んでいます。臓器や器官の再生医療の基礎となる研究をおこなっています。
主な発表論文・著作
- Karaiwa et al., Genes to Cells, 25, 852, 2020
- Naoki H et al., PLoS Computational Biology, 15, e1006579, 2019
- Sari DWK, et al., Scientific Reports, 8, 4335, 2018
- Akiyama R. et al., Development, 141, 1104, 2014
- Retnoaji B et al., Development, 141, 158, 2014
- Matsui T. et al., Development, 139,3553, 2012
- Kim W. et al., Mol Biol Cell, 22, 3541, 2011
- Matsui T. et al., PNAS, 108, 9881, 2011
- 別所康全, システム/制御/情報, 51, 493-498, 2007
- 別所康全, 細胞工学, 7, 755-758, 2007