セミナー情報
リン酸化プロテオミクス技術の最前線
演題 | リン酸化プロテオミクス技術の最前線 |
講演者 | 石濱 泰 准教授 (慶應義塾大学先端生命科学研究所) |
使用言語 | |
日時 | 2010年2月4日(木曜日) 16:00~17:00 |
場所 | バイオサイエンス研究科 L13 会議室 |
内容 | 近年、高精度・高感度質量分析計や各種大規模定量法の開発に加えて、固定化金属イオン親和性クロマトグラフィーや酸化金属クロマトグラフィーによる選択的リン酸化ペプチド濃縮法の高性能化により、リン酸化プロテオミクスは目覚しい発展を見せている。これまでにEGF刺激によるシグナル伝達の変動やタンパク質リン酸化による細胞周期の制御機構研究に適用され、2,000~3,000タンパク質、6,000~14,000部位についてのリン酸化ダイナミクスの定量解析が報告されている。しかしこれらの研究においては細胞抽出物試料などの複雑な試料についてリン酸化プロテオーム解析を行う必要があるため、複数の濃縮法や前分画法を組み合わせてリン酸化ペプチドの同定効率を上昇させなければならず、必要試料量や測定時間の増加、更には偽陽性同定率上昇による精度の低下などの問題が生じている。最近、我々のグループでは、ヒドロキシ酸で被覆したチタニアやジルコニアなどの酸化金属を用いてリン酸化ペプチドを特異的に濃縮するヒドロキシ酸修飾酸化金属クロマトグラフィー法(HAMMOC法)を開発した[1,2]。Orbitrap MSを用いたnanoLC-MS法と組み合わせることにより、細胞抽出物試料から前分画なしに一度に数千個のリン酸化サイトを同定することが可能となった。我々は更にこの手法を発展させ、最少試料量から単一でしかも偏りのない高選択性リン酸化ペプチド濃縮法のみを用い、LC-MS測定数を最小限にすることにより、ハイスループットと高効率を両立させる「高性能リン酸化プロテオミクス」システムの確立を目指している。本講演ではHAMMOC法を用いた高性能リン酸化プロテオミクスによる様々な生物種のシグナル伝達ネットワーク解析の最新の結果[3-5]や、我々が現在取り組んでいる抗癌剤創薬を視野に入れた定量的タンパク質リン酸化ディスプレイ法について紹介する。 <参考>
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問合せ先 | 細胞内情報学 稲垣 直之 (ninagaki@bs.naist.jp) |