セミナー情報
細胞成長を司るTORC1シグナル経路の解析
演題 | 細胞成長を司るTORC1シグナル経路の解析 |
講演者 | 両角 佑一 博士(バイオサイエンス領域 微生物インタラクション研究室 助教) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2024年11月6日(水曜日) 10:15~11:00 |
場所 | 大セミナー室(C109) |
内容 | Target of Rapamycin(TOR)は酵母からヒトに至る真核生物で高度に保存されたタンパク質キナーゼであり、機能の異なる2つの複合体(TORC1、TORC2)を形成する。このうち、TORC1はアミノ酸などの栄養源に応答し、細胞成長や増殖を促進する役割を果たす。ヒトにおいて、mammalian TORC1(mTORC1)の異常活性化は細胞のがん化や神経疾患の原因になることが知られている。また、様々なモデル生物でTORC1が老化や寿命と密接に関わっていることも報告され、アンチエイジングの観点からもTORC1シグナル経路は注目されている。我々は、ヒトと類似したTORC1経路を持つ分裂酵母をモデルとして、その分子メカニズムの理解を目指して研究を進めてきた。その中で、TORC1の基質認識機構が分裂酵母とヒトの間で高度に保存されていることを見出した(1)。また、TORC1経路の関連因子をいくつか同定し、その機能を明らかにしてきた(2)。さらには、通常37℃を超える温度では生育阻害を示す分裂酵母が、TORC1を抑制することで39℃の高温環境下でも増殖できるようになることを発見した。このことは、細胞増殖促進因子として知られているTORC1が、高温では生育を抑制していることを示唆している。この発見を足がかりとして、我々は分裂酵母には高温での生育をあえて抑制するメカニズムが備わっていることを明らかにした。本セミナーでは、これらの研究成果を紹介するとともに今後の展望について議論したい。 |
問合せ先 | 遺伝子発現制御 別所 康全 (ybessho@bs.naist.jp) |