セミナー情報
転写因子の機能を利用した植物の老化遅延及び収穫後鮮度保持能力の改変
演題 | 転写因子の機能を利用した植物の老化遅延及び収穫後鮮度保持能力の改変 |
講演者 | 鈴木 馨 博士 (独立行政法人産業技術総合研究所バイオメディカル部門分子細胞育種研究グループ) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2010年5月17日(月曜日) 16:30~ |
場所 | バイオサイエンス研究科 大セミナー室 |
内容 | 植物において有用物質やバイオマス資源を効率的に生産するためには、代謝系、成長・分化及び環境応答といった物質生産プロセスに関係する様々な機能を統括的に操作する転写因子を利用することが有用と考えられている。そこで、モデル植物において転写因子の機能解析を進め、植物の物質生産プロセス制御の基盤として重要なあるいは有用な機能が期待される転写因子遺伝子の探索と作用機構の解析を行って来た。その中で、ある転写因子の過剰発現体において、生育過程での老化(senescence)が遅延することを見出した。切除葉においては、長日条件で誘導されるアントシアニン蓄積及び連続暗条件で誘導されるクロロフィル減少の低減などが見られ、老化が遅延すると共に収穫後の鮮度保持能力が向上していた。また、この転写因子は、過剰発現によってオキシリピン合成系の遺伝子発現を抑制的に制御すると共に植物の幼若性を維持し、その結果、老化の遅延及び収穫後の鮮度保持能力の向上が引き起こされるものと考えられた。このような知見は、植物の老化制御機構の新たな側面を示唆しており、老化機構の理解を深めることに大きく貢献できるものと考えられる。また、植物における有用物質やバイオマス生産の生産性の向上、原料成分の状態保持、収穫物の貯蔵・輸送の効率化などへの応用が期待される。 |
問合せ先 | 細胞間情報学 高山 誠司 (takayama@bs.naist.jp) |