NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

翻訳品質管理機構によって支えられる多細胞生物の個体と遺伝子発現

演題 翻訳品質管理機構によって支えられる多細胞生物の個体と遺伝子発現
講演者 石橋 幸大 博士 (京都産業大学生命科学部博士研究員)
使用言語 日本語
日時 2024年5月23日(木曜日) 13:30~14:15
場所 大セミナー室(C109)
内容

リボソームの翻訳伸長反応はmRNAの配列や構造、損傷、新生鎖のアミノ酸配列などの様々な要因で止まることがあり、これはmRNA上でのリボソームの停滞、さらには衝突を引き起こす。リボソーム衝突は合成途中の新生鎖の蓄積・凝集による細胞毒性をもたらすため、衝突を解消するための翻訳品質管理機構が存在する。酵母やヒト培養細胞を用いた研究で、これらのメカニズムの理解は急速に進展する一方で、多細胞生物、特に個体レベルでの翻訳品質管理機構の重要性を理解するまでには至っていない。この点を明らかにするため、我々は小型熱帯魚ゼブラフィッシュの初期発生をモデルに用いたアプローチをおこなっている。
今回、翻訳品質管理機構を欠損するゼブラフィッシュ変異体を用いた解析から、C2H2型ジンクフィンガー遺伝子をコードするmRNA上でリボソームの停滞・衝突が起きていることを見出した。さらにこのリボソーム停滞はmRNA分解を誘導すること、また翻訳品質管理機構は全長タンパク質の安定的な合成に寄与していることを明らかにした。本セミナーではこれらの研究成果に加えて、変異体が示す表現型を含めた最新のデータも紹介し、翻訳品質管理機構がいかにして多細胞生物の遺伝子発現、ひいては個体の成立を支えているか議論したい。

問合せ先 遺伝子発現制御
別所 康全 (ybessho@bs.naist.jp)

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