セミナー情報
炎症応答とエピジェネティクス
演題 | 炎症応答とエピジェネティクス |
講演者 | 加納 規資 博士 (バイオサイエンス領域分子免疫制御研究室 博士研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2023年9月21日(木曜日) 10:00~10:45 |
場所 | Rethinkバイオ大講義室(L11) |
内容 | 【要旨】
自然免疫は、感染による初期炎症応答や後に続く獲得免疫系の活性化を誘導するために重要な役割を果たす生体防御機構である。一方、その制御機構の破綻により炎症が慢性化し、炎症性疾患や自己免疫疾患が発症することが知られている (1)。我々は自然免疫による炎症制御機構を理解するため、CRISPR-Cas9システムを用いて網羅的なKOスクリーニングを行った結果、新規分子ENZ-1を同定した。ENZ-1 KOマクロファージ細胞では、インターロイキン6(IL-6)やケモカイン等の炎症メディエーターの過剰産生が観察された。興味深いことに、ENZ-1 KO細胞では、ヒストンH3リジン4のモノメチル化(H3K3me1)レベルがゲノムワイドで亢進しており、特に、発現上昇を示す遺伝子の上流に存在するエンハンサーと予測される領域に蓄積していた。また、マクロファージ特異的にENZ-1 KOマウスを作製し、解析を行ったところ、IL-6が関与することが知られる関節リウマチの発症頻度が亢進していた。これらのことから、ENZ-1は炎症関連遺伝子のエンハンサー領域のメチル化を制御することで過剰な炎症を抑制している新規因子であることが示唆された。本セミナーでは、ENZ-1による炎症応答メカニズムの機能解析によって得られた最新のデータを含めながら、エピジェネティク制御による炎症反応の変化や、老化に伴い生じる炎症とENZ-1の関連についても紹介したい。
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問合せ先 | 遺伝子発現制御 別所 康全 (ybessho@bs.naist.jp) |