セミナー情報
野外環境における植物の季節性花成応答
演題 | 野外環境における植物の季節性花成応答 |
講演者 | 久保田 茜 博士(奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 植物生理学研究室 助教) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2023年5月17日(水曜日) 13:30~14:15 |
場所 | Rethinkバイオ大講義室(L11) |
内容 | 植物は、日長や温度などを感知することで花成時期を最適化し、生存戦略に役立てている。先行研究により、環境シグナルが花成ホルモンをコードするFT遺伝子を介して季節性花成を誘導する分子メカニズムが明らかにされてきたものの、光や温度といった複数の環境要因が変動する野外環境における花成応答の分子基盤の解明には至っていない。そこで我々は、春先の野外環境における花成応答を解析した結果、一般的に広く用いられる実験室条件と野外環境では、日長や平均気温が同一であってもFT遺伝子が機能する時間帯が大きく異なることを見出した [1]。野外環境におけるFTの発現様式は、実験室条件の光質、および温度条件を変化させることで再現することができた。確立した再構成条件を利用して温度や光の変動がFT遺伝子の発現や花成応答に与える影響を解析した結果、特定の時間帯における遠赤色光シグナルや温度シグナルの組み合わせによってFTの発現が決まることを見出した [2]。特に温度シグナルは、FTの主要な転写制御因子の翻訳後制御やDNA結合能を調節することで、一日を通じてFTの発現制御に関与することを見出した。再構成系でみられた温度・時間依存的なFT発現様式の制御は、春先から初夏にかけて野外で生育した植物体においても観察されたことから、再構成系で得られた知見は野外環境における季節性の花成応答の一部を説明可能であり、気温変動下における植物の花成応答の解析に有力な実験系であると期待された。 |
問合せ先 | 植物生理学 遠藤 求 (endo@bs.naist.jp) |