セミナー情報
リン脂質sn-1位の脂肪酸種を規定する因子の同定と機能解明
演題 | リン脂質sn-1位の脂肪酸種を規定する因子の同定と機能解明 |
講演者 | 川名 裕己 博士(東京大学大学院薬学系研究科 特任助教) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2023年1月18日(水曜日) 10:00~10:45 |
場所 | Rethinkバイオサイエンス大講義室(L11) |
内容 | 生体膜を構成するリン脂質はグリセロール骨格のsn-1位とsn-2位に2つの脂肪酸部位を有しており、様々な種類の脂肪酸が結合して組み合わさることで多様なリン脂質分子種が形成されている。近年、特徴的な脂肪酸組成を有するリン脂質分子種が特定の組織や細胞に限局し、その機能の維持に重要な働きを持つことが報告されている(1)。リン脂質の脂肪酸部の形成にはリゾリン脂質アシル基転移酵素(LPLAT)と呼ばれる酵素群が重要な働きを持つと考えられている。これまでに解析されたLPLAT分子の多くはsn-2位の脂肪酸種を規定するものであり、 sn-1位の脂肪酸種の規定に関わるLPLATの解析は遅れていた。そこでリン脂質sn-1位の脂肪酸導入活性の評価系を構築し(2) 、培養細胞を用いた生化学的な活性スクリーニングからsn-1位に脂肪酸導入をするLPLATを複数同定した。このうちLPLAT7/LPGAT1はsn-1位にステアリン酸(C18:0)をもつリン脂質の形成に必須の酵素であることがわかった(3) 。 LPLAT7/LPGAT1を欠損した動物個体の解析から欠損ゼブラフィッシュでは精子形成や個体の発生に異常が生じることが明らかになった(4) 。また欠損マウスでは進行性の網膜変性が認められ、ステアリン酸含有リン脂質が視覚機能の発揮に必須であることが明らかとなった。
本セミナーでは新規リン脂質代謝酵素の同定から欠損動物を用いた機能解析を通じ て、膜リン脂質の“質”が生体に及ぼす影響を概説する。さらに特異な脂肪酸組成のリ ン脂質がどのように生体膜の機能を調節しているのか展望も含めて議論したい。 |
問合せ先 | 植物成長制御 梅田 正明 (mumeda@bs.naist.jp) |