NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

ジャスモン酸による開花制御機構の研究

演題 ジャスモン酸による開花制御機構の研究
講演者 田畑 亮 博士 (東京大学大学院理学系研究科 生物科学専攻 生体制御研究室)
使用言語 日本語
日時 2010年5月27日(木曜日) 15:00~
場所 バイオサイエンス研究科 大セミナー室
内容

花は植物にとって生殖器官であり、確実に子孫を残すために、各花器官が開花 時に協調的な発達、成熟をして効率の良い受粉を達成している。特に雄しべと花 弁の協調的な発達は重要であり、花弁の伸長によって花が開き、同時に伸長、成 熟した雄しべが露出することで受粉可能になる。近年、この雄しべと花弁の同調 した伸長および葯の裂開に、ジャスモン酸(JA)の働きが重要であることが明ら かになってきた。我々が単離した、雄しべと花弁の伸長の同調性が乱れる defective coordination1(deco1)突然変異体は、活性型ホルモン一斉解析をおこ なったところ、花序におけるJA量が野生型の約30%に減少していることが明らか となった。さらに、JAおよびJA中間産物、代謝物の一斉測定の結果、deco1突然 変異体の花序ではβ酸化以降の経路が抑制されていることがわかった。そして、 このdeco1突然変異体における花弁伸長の抑制はJA添加によって回復した。続い てポジショナルクローニングをおこなったところ、DECO1は機能未知のシトクロ ームP450モノオキシゲナーゼをコードしていることが明らかになった。また、 DECO1は開花時の花糸特異的な発現パターンを示した。これらの結果は、開花時 の花糸においてDECO1経路によって合成されるJAが花弁へ移動し、開花(花弁伸 長)をうながしていることを示唆している。  以上のことより、本セミナーでは、DECO1を介した新たなジャスモン酸生合成 経路の存在、またジャスモン酸を介した花器官の協調性が生み出されるメカニズ ムについて議論したい。

問合せ先 植物分子遺伝学
島本 功 (simamoto@bs.naist.jp)

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