NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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マウス神経管発生過程におけるWnt産生細胞の形態変化の制御と意義

演題 マウス神経管発生過程におけるWnt産生細胞の形態変化の制御と意義
講演者 篠塚琢磨 博士(基礎生物学研究所 特任助教)
使用言語 日本語
日時 2021年9月16日(木曜日) 10:00~10:45
場所 オンライン開催
内容
Wntをはじめとする分泌性シグナルタンパク質を介した発生の制御機構の解明には、組織内におけるこれらのタンパク質の空間分布を理解することが重要である。発生初期の脊髄神経管では、最も背側の領域であるroofplateでWnt1とWnt3aが発現し、背腹軸に沿ったパターン形成を制御している。一方、発生後期のroof plateにおけるWntの発現、機能については明らかになっていなかった。我々は、Wntタンパク質の可視化とroof plate細胞の単一細胞レベルでの標識を行い、roof plate細胞がWntの発現を維持したまま、頂端面を神経管内腔に接しつつ正中沿って伸長することを明らかにした。そこで、Wntの分泌に必要なWntlessをroof plate特異的に阻害したところ、roof plate細胞から分泌されたWntは内腔を取り囲む上衣細胞でWntシグナルを活性化し、細胞増殖を促進することが明らかになった。(1)また、我々はWntシグナルがroof plate細胞の頂端面の収縮にも必要であることを見出した。Wntの変異胚ではroof plate細胞の頂端収縮が起こらず、頂端面でのミオシンのリン酸化が減少したことから、Wntシグナルはアクトミオシン細胞骨格を介してroof plateの細胞形態を制御していると考えられた。さらに、この頂端収縮と同時期にroof plate細胞の頂端面へのWntタンパク質の集積が観察された。このことから、Wntタンパク質の局所的な集積により、roof plate細胞の頂端収縮が引き起こされる可能性が示唆された。
【参考論文】(1) Shinozuka et al.,DevelopmentJan 16;146(2):dev159343. (2019)
問合せ先 植物成長制御
梅田 正明 (mumeda@bs.naist.jp)

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