NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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複雑な細胞表面構造をつくる : ケラチンとプラキンの分子相互作用によるMicroridges形態形成

演題 複雑な細胞表面構造をつくる : ケラチンとプラキンの分子相互作用によるMicroridges形態形成
講演者 稲葉 泰子 博士 (元 カリフォルニア大学ロサンゼルス校 研究員)
使用言語 日本語
日時 2020年12月23日(水曜日) 10:30~11:15
場所 開催はZOOMによる電子開催です。
参加をご希望の方は、別途ZOOMのURLをお知らせいたしますので、bsjimu-kyomu@bs.naist.jp まで、
参加希望の旨をご連絡ください。
内容

 細胞は微絨毛、繊毛などの複雑な構造を正確に作ることができる。細胞レベルの構造体は細胞骨格であるアクチンおよび微小管がその形成を担っており、分子メカニズムが詳細に研究されている。一方で、細胞骨格の主要な構成成分である中間系フィラメント(ケラチン)が形づくりにおいて役割を持つのか不明であった。今回、ゼブラフィッシュ表皮細胞表面にみられるMicroridges(指紋状の微小構造)をモデル系とし、プラキン分子がアクチンとケラチンをつなぎMicroridges形成を制御する事を見出した。
 Microridgesはアクチンからなる突起構造であり、一細胞内で指紋状の構造をとる。ヒトの角膜や、頬の内側など粘膜上皮でみられるが、形成メカニズムは不明であった。細胞骨格同士をつなぐリンカー分子であるプラキンに着目し、ノックアウトゼブラフィッシュを作製した結果、プラキンノックアウト胚ではMicroridgesが形成されず、プラキンがMicroridges形成初期に必須であることが明らかになった。プラキンのケラチン結合ドメインを欠損した変異体ではMicroridgesの伸長が見られず、ケラチンとプラキンの相互作用はMicroridges形成後期に必要である事が判明した。さらにケラチンはMicroridges形成後期にみられる長いMicroridgesに限局し、Microridges構造を安定化
していることが判明した。
 以上本研究により、一細胞レベルの構造体Microridgesはプラキンを介して少なくとも2段階の形成過程を経ることが明らかとなった。またケラチンがMicroridges伸長に寄与
し、形づくりにおいて重要な役割を果たすことを世界に先駆けて明らかにした。

問合せ先 植物細胞機能研究室
橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp)

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