セミナー情報
栄養源飢餓ストレス下におけるTSC-mTOR経路の役割
演題 | 栄養源飢餓ストレス下におけるTSC-mTOR経路の役割 |
講演者 | 中瀬由起子 博士 (京都大学大学院 生命科学研究科 特任助教) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2020年8月6日(木曜日) 10:30~11:15 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | TSC1‐2複合体は、small GTPase RHEBを介して、栄養状態と細胞増殖のカップリングを
司るマスターレギュレーターmTORを制御する。TSC1/2‐mTOR経路が保存された最もシ ンプルな生物である分裂酵母をモデルとし、この経路が制御する生命現象の分子レベ ルでの理解を目指してきた。 遺伝学的アプローチにより、RHEB GTPaseの翻訳後修飾に重要な機能を果たすファ ルネシル基転移酵素Cpp1を同定した。また、TSC1/2‐RHEB経路が、ユビキチン化酵素 Pub1とβ‐アレスチン様タンパク質Any1との複合体を介して、アミノ酸受容体の細胞表面 局在を制御することを見出した。さらに、マイクロアレイによる遺伝子発現解析により、 TSC1/2を欠損する細胞では、栄養源飢餓ストレス下においてレトロトランスポゾンが異常 に発現することが判明した。このレトロトランスポゾンの異常な発現は、TSC‐mTOR経路 の欠損により、レトロトランスポゾンウィルス様粒子を速やかに分解するオートファジー が誘導されないことが主な原因であることも判明した。これらの結果は、TSC1/2‐mTOR経 路が、飢餓ストレス下における適応応答のみならず、ゲノム構造の恒常性維持にも寄与 することを示唆する。 近年になり、種々のストレス下(DNA損傷、栄養源飢餓)において、セントロメアに特 異的に結合するタンパク質CENP‐Aがセントロメアから除去される現象(セントロメア崩 壊)が報告されている。分裂酵母では、窒素源枯渇によりセントロメア崩壊が誘導される ことを見出した。興味深いことに、tsc2遺伝子欠損株やRHEB GTPaseのドミナントアクティ ブ変異体では、セントロメア崩壊が遅延する。目下、この現象の機序と意義の解明を目 指している。 |
問合せ先 | 植物細胞機能研究室 橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp) |