NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

経験に依存した動物の行動切り替えに関わる神経回路

演題 経験に依存した動物の行動切り替えに関わる神経回路
講演者 ジャン ムンソン 博士(東京大学 大学院理学系研究科生物化学専攻 特任研究員)
使用言語 日本語
日時 2019年11月21日(木曜日) 14:00~14:45
場所 L12会議室
内容
微生物から高等動物に至るまで、生物は環境に適応し生き延びるために様々な戦略を示す。本研究では線虫C. elegansを用いて、経験がどのように神経回路の働きを変化させ、過去の記憶を頼りに新たな行動戦略を生み出すのか、そのしくみを解明することを目的とした。C. elegansはシンプルな神経系を持っており、全ての神経細胞の位置や神経間の接続が完全に明らかになっているモデル生物である。線虫は、摂食時に経験した食塩の濃度を記憶しその塩濃度に誘引される、一方、飢餓を経験した線虫は飢餓時の塩濃度を忌避する行動に切り替わる。これにより、線虫はエサを得る確率を高めていると考えられる。飢餓により引き起こされる塩濃度忌避行動には塩を感知するASERと呼ばれる感覚神経からの情報入力に加えて、学習では機能が未知であった感覚神経であるASGからの入力が必要であることが明らかになった。飢餓の状態が続くと、ASG神経は自発的な活動と神経伝達物質の放出が上昇し、ASER神経と協調的に飢餓を経験した塩濃度から逃げる行動の方向性を制御していた。本研究は、餌がない状況を避けるという、我々人間も含め生物間で共通した学習行動に潜む新たな仕組みの理解につながると期待される。
問合せ先 植物細胞機能研究室
橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp)

セミナー情報一覧へ