NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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微小管を中から変える:ペプチドを基盤とした微小管への分子内包

演題 微小管を中から変える:ペプチドを基盤とした微小管への分子内包
講演者 稲葉 央 博士(鳥取大学 学術研究院工学系部門 応用化学講座 助教)
使用言語 日本語
日時 2019年10月30日(水曜日) 10:00~11:00
場所 L13会議室
内容

細胞骨格の一種である微小管は、チューブリンが重合して形成される内径15 nm、長さ数μm~数十μmのチューブ構造体であり、細胞の形態保持・運動・物質輸送などに重要な役割を果たしている。近年、微小管とその外部表面に結合するモータータンパク質を組み合わせることで、運動性を有するアクティブマテリアルの開発が盛んに行なわれている。これまで微小管の材料応用は全て「外部」表面への分子修飾によって行われており、微小管の「内部」空間はほとんど注目されていなかった。一方、鞭毛や繊毛中の微小管は内部にタンパク質が結合して安定化されることが近年明らかとなっており、内部空間は微小管にとって重要な意味を持つと考えられる。したがって、これまで未開拓であった微小管内部への分子導入により、微小管自体の構造や機能を理解・改変できる可能性がある。
 我々は、ペプチドをベースとした微小管内部への分子導入法の確立と、様々な分子の内包による新規材料開発を目指して研究を進めてきた[1]。まず、微小管関連タンパク質の一種であるTauから微小管内部に結合するペプチドTau-derived peptide (TP)を開発した[2]。TPを用いることで、金ナノ粒子[2]やGFP[3]、磁性ナノ粒子などの微小管への内包に成功し、これらの内包によって微小管の物性が変化することが明らかとなってきた。さらに、TPが細胞内の微小管に結合できることを見出している[4]。本講演では、これら微小管内部に着目した一連の研究と今後の展望について議論する予定である。

[1] H. Inaba, K. Matsuura, Chem. Rec., 19, 843 (2019); 稲葉央, 松浦和則, 化学, 74, 28 (2019).
[2] H. Inaba, T. Yamamoto, A. M. R. Kabir, A. Kakugo, K. Sada, K. Matsuura, Chem. Eur. J., 24, 14958 (2018).
[3] H. Inaba, T. Yamamoto, T. Iwasaki, A. M. R. Kabir, A. Kakugo, K. Sada, K. Matsuura, Chem. Commun., 55, 9072 (2019).
[4] H. Inaba, T. Yamamoto, T. Iwasaki, A. M. R. Kabir, A. Kakugo, K. Sada, K. Matsuura, ACS Omega, 4, 11245 (2019).

問合せ先 構造生命科学
市川 宗厳助教 (michikawa@bs.naist.jp)

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