セミナー情報
ウキクサの概日時計から考える生命システムの頑健性と柔軟性
演題 | ウキクサの概日時計から考える生命システムの頑健性と柔軟性 |
講演者 | 村中 智明 博士(京都大学生態学研究センター 研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2019年3月12日(火曜日) 10:30~12:00 |
場所 | L12会議室 |
内容 | 様々な時間・空間スケールで変動する環境下で生きる生命には、撹乱に無視する頑健性と環境変化に応答する柔軟性を併せ持つ必要がある。私はウキクサの概日時計が、生命システムに求められる頑健性と柔軟性のモデルとなると考えている。1920年に発見された光周性花成は、脳を持たない植物が日長を測るための計時機構、すなわち時計を備えることを明らかとした。この計時機構は生体内に自律的に生成される約1日周期のリズム=概日リズムを基盤とすることから、今日では概日時計と呼ばれている。
概日時計を構成する遺伝子は各細胞で発現しており、概日時計は多細胞システムと考えられる。我々はパーティクルガン法を利用した1細胞リズム測定技術を開発し、イボウキクサを材料に、植物の概日時計を多細胞系として解析した。連続明のような定常条件では、各細胞のリズムは脱同期し、個体内で時間情報が統一されなかった。この脱同期は細胞のリズムの周期が不均一かつ不安定なことに起因していた。一方で、この独立性が高く不安定な細胞時計は、明暗条件下では一転、安定な空間パターンを形成するなど秩序だった振る舞いをみせることが明らかとなってきた。このように一細胞リズムの柔軟性と頑健性を明らかとしたが、細胞レベルでのリズム安定性は、その意義の解釈が難しいことも痛感した。そこでアオウキクサを材料に、光周性花成における限界日長の地域適応の研究を開始し、限界日長と概日リズム周期には負の相関があることを見出した。 本発表では細胞レベルと個体レベルでの概日リズム周期の多型(柔軟性)について紹介し、議論したい。 |
問合せ先 | 植物生理学 遠藤 求 (endo@bs.naist.jp) |