NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

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植物器官の発生と力学的特性

演題 植物器官の発生と力学的特性
講演者 中田 未友希 博士(産業技術総合研究所 特別研究員)
使用言語 日本語
日時 2019年2月22日(金曜日) 10:00~10:45
場所 大セミナー室
内容
 植物は生涯器官を作り続け、成長し続ける。発生過程において細
胞分裂・伸長・分化が適切に制御されることで、器官ごとに決まっ
た形に成長し、特有の化学的・力学的特性を獲得する。器官発生メ
カニズムの解明は学術的に重要であるだけでなく、形質改良育種
など産業応用にも有用である。私はこれまで主要な植物器官であ
る葉・根・茎それぞれの研究に携わってきた。それらのうちの2つに
ついてご紹介する。
 1つ目は、葉の初期発生の分子メカニズムに関する研究である。
葉が扁平な形に成長するためには茎頂分裂組織に対する遠近軸
(向背軸)に沿ったパターン(向背パターン)が重要であることが知
られていた。私は、葉身の発達に関わる2つのホメオボックス転写
因子PRSとWOX1の分子遺伝学的解析を行い、向背両領域の間に
どちらの領域とも異なる特徴を持つ新たな領域の存在を見出し、中
間領域と名付けた。また、中間領域が向背パターンに依存して確
立し、葉の扁平化において中心的な役割を果たすことも明らかにし
た。
 2つ目は、茎の力学的特性の簡便な評価方法の開発である。茎
の細胞壁に含まれるセルロースは重要な再生可能資源の1つであ
る。木質改変によるセルロース利用効率の向上は茎の物理強度の
低下を伴う例が報告されている。このことから、スクリーニング段階
での力学的特性の定量評価が必要と考えられたが、スループット
等の問題から既存の方法はスクリーニングに用いるには適してい
なかった。そこで私は、iPhoneカメラとプログラミング言語Pythonを
活用し、茎の力学的特性の新しい評価方法を開発した。この方法
は定量的で比較的スループットが高く、手軽で低コストでありスク
リーニングスケールに拡張可能である。
本発表ではこれらの研究の詳細を述べるとともに、今後の展望に
ついて議論したい。
【参考論文】
Nakata et al., Plant Cell, 24(2): 519‐535 (2012)
Nakata et al., Front. Plant Sci., 9: 780 (2018)
問合せ先 植物細胞機能
橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp)

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