セミナー情報
陸上植物の光周性生長相制御の分子メカニズム
演題 | 陸上植物の光周性生長相制御の分子メカニズム |
講演者 | 久保田 茜 博士 (ワシントン大学 生物学部 ポスドク研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2018年4月3日(火曜日) 15:30~16:15 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 適切なタイミングで生長相転換(花成) を行なうことは、植物の生存戦略上非常に重要である。光周性シグナルは、主要な花成制御シグナルとして被子植物に幅広く保存されている。しかし、実際に野外で見られる花成現象においては、光、温度、栄養条件をはじめとするさまざまな要因が花成のタイミングを複合的に制御する。このような条件下で、光周性シグナルが他の環境因子と相互作用しつつ、花成時期の決定にどの程度寄与するかに関しては、あまり明らかにされていない。
そこでまず、光周性シグナルの進化的起源を明らかにするために、長日植物である苔類ゼニゴケの生長相制御機構に着目した。その結果、概日時計からGIGANTEA-FLAVIN-BINDING, KELCH REPEAT, F-BOX 1 (FKF1) 複合体を介した光周性シグナルが、植物の陸上化の時点ですでに獲得されていたことを明らかにした(1, 2)。次に、被子植物シロイヌナズナを用いて、光周性シグナルと他のシグナルとのクロストークを解析することとした。特に、GI-FKF1複合体の直接の標的である転写因子CONSTANS (CO) の転写制御因子を探索し、class II TCPファミリーに属するTCP4を同定した(3)。さらに、TCP4はGIと相互作用し、GI依存的にCOの転写を促進することを見出した(3)。TCP4は主に葉の発生やジャスモン酸シグナルにも関与することが知られているため、これらの結果は、COが花成経路のハブとして機能することを示唆している。 現在は、花成現象のネットワーク全体における光周性シグナルの役割を明らかにするため、野外の花成制御の分子メカニズムを解析している。これまでに、野外で生育したシロイヌナズナの花成時期および花成ホルモンをコードするFLOWERING LOCUS T (FT) の遺伝子発現パターンを実験室環境下で再現することができた。本発表では、野外環境において光周性シグナルが温度や光質とどのように相互作用しつつFTの発現を調節するかについて紹介したい。 |
問合せ先 | 植物細胞機能 橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp) |