セミナー情報
フリッパーゼによる生体膜脂質の動態制御と生理機能
演題 | フリッパーゼによる生体膜脂質の動態制御と生理機能 |
講演者 | 申惠媛博士(京都大学大学院薬学研究科准教授) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2018年1月15日(月曜日) 15:30~16:30 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 生体膜は脂質二重層で構成されており、その内葉と外葉においてリン脂質組成の非対称性を有し動的秩序を保持している。細胞膜において、内葉(細胞質側)はホスファチジルセリン(PS)やホスファチジルエタノラミン(PE)、外葉(細胞外側)はホスファチジルコリン(PC)やスフィンゴミエリン(SM)に富んでおり、内葉と外葉のリン脂質構成の非対称性はリン脂質のフリップ―フロップによって調節されている。私たちはこれまでにこの非対称性を調節するフリッパーゼP4-ATPaseファミリーの細胞内局在を決定し、細胞膜に局在する一部のフリッパーゼのフリップ活性および基質特異性を決定した。そのうち、PC-フリッパーゼの活性が遺伝病発症に関連があることや細胞膜ダイナミクスに関与することを示してきた。
定常状態の細胞膜において内葉に限局しているPSは、アポトーシスを起こした細胞や活性化された血小板や赤血球の表面に露出する。露出したPSは、それぞれマクロファージによる貪食のシグナルや血液凝固のシグナルとなる。また、このPS露出にはスクランブラーゼの活性化とフリッパーゼの不活性化が同時に起こることが必要であると考えられている。一方、アポトーシスを起こした細胞や血小板のように死にゆく細胞ではなく、正常な細胞(例えば、免疫細胞や神経内分泌細胞など)においても細胞が活性化されると一過性にPSが露出されることが示されている。しかしながら、一過性のPSの露出および回復のメカニズムは全く分かっていなかった。 私たちは細胞膜でのPS-フリッパーゼ(ATP11C)活性がPKCによって制御されていることを見出した。細胞膜のATP11Cが、Ca2+依存性PKCの活性化によってエンドサイトーシスされ、細胞膜でのPSフリッパーゼ活性がダウンレギュレーションされることを示した。また、ATP11Cはシグナルがなくなると再び細胞膜へリサイクルされることを見出した。したがって、Ca2+シグナルによってPSフリッパーゼが細胞膜から一時的に隔離されることで、細胞膜のPSフリッパーゼ活性が阻害されることが示唆された。本セミナーでは、PS-フリッパーゼのエンドサイトーシスによる活性調節の分子メカニズムと一過的PS露出の生理的意義について議論したい。 |
問合せ先 | 植物細胞機能 橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp) |