NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

イネ胚の極性を作り出すシグナル伝達

演題 イネ胚の極性を作り出すシグナル伝達
講演者 佐藤 豊 教授(国立遺伝学研究所)
使用言語 日本語
日時 2017年11月10日(金曜日) 15:30~16:30
場所 大セミナー室
内容

種子植物の胚発生は胚珠の種子への発達と平行して母体の中で進行する。すなわち種子は、
母体の細胞と次世代をになう細胞の遺伝的キメラになっている。種子形成の過程で、胚は、
茎頂分裂組織・根端分裂組織・表皮・維管束など将来の植物体を構成するのに必要な器官や
組織を発生し、植物の基本的な体制を作り出す。この間、位置情報の確立、軸決定、器官・
組織の分化といった多くの重要な現象が短い期間に凝縮して進行する。このように複雑かつ
緻密な胚形成の過程では、細胞間、組織間そして母体との間で、それぞれの協調的な発達を
可能にするさまざまな情報や物質のやり取りが存在するに違いない。私たちの研究グループ
では、胚を中心とした細胞間・組織間そして母体との協調的な発達を可能にする情報伝達を
明らかにすることを目的に研究を行っている。
イネでは多数の胚発生致死突然変異体が単離されている。これらの変異体の中には、胚形
成過程におけるさまざまな情報のやり取りのプロセスに関わる多くの遺伝子の変異が含まれ
ていると予想される。私達の研究グループでは特に胚発生初期における器官分化に必要な情
報伝達を明らかにすることを目的とし、器官分化に欠損のあるイネ胚発生致死突然変異体の
表現型解析と原因遺伝子の単離を行ってきた。解析対象の材料が胚発生致死変異体というこ
ともあり、表現型の解析は通常の劣性ホモ型変異体を維持出来る材料に比べるとハンディー
は少なくない。しかし、私達の研究グループでは、分離してくる変異体ホモ型の表現型を効
率的に観察する方法や、変異体ホモ型を材料に遺伝子発現プロファイルをする実験系を準備
する事により、このハンディーを乗り越えようとしている。本発表ではこのような取り組み
の一部を紹介するとともに、更なる改善点を議論したい。また、遺伝子単離に関する進捗に
ついても報告する。これまでに、各種キナーゼ等、細胞間の情報伝達への関与が強く示唆さ
れる遺伝子産物をコードする原因遺伝子が複数単離されている。これらの機能について議論
する。

問合せ先 植物成長制御
梅田 正明 (mumeda@bs.naist.jp)

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