セミナー情報
メディエーターの結晶構造から明らかになってきた転写開始のメカニズム
演題 | メディエーターの結晶構造から明らかになってきた転写開始のメカニズム |
講演者 | 野澤 佳世博士 (Max Planck Institute for Biophysical Chemistry研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2017年8月3日(木曜日) 16:00~17:00 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | タンパク質の鋳型となるmRNAや遺伝子のオン・オフを切り替える小分子RNAは、RNAポリメラーゼII (Pol II)が、種々の基本転写因子と共同しながら合成している。しかし、Pol IIと基本転写因子だけでは、細胞の分化や生育、発生状態に応じた転写制御を行うことはできない。メディエーター (MED)は、転写開始領域から遠く離れたエンハンサーDNAと転写マシーナリーを直接繋ぐことによって、真核生物のほとんどすべての遺伝子に活性化シグナルを伝える、重要な転写コファクターである。酵母においてMEDは、~1.4 MDa、25サブユニットからなる超分子複合体であり、ヘッド、ミドル、テール、キナーゼから構成される、そのモジュールのほとんどが菌類からヒトまで、保存されている。テールやキナーゼモジュールが、アクチベーターとの相互作用に関係する一方で、ヘッドとミドルモジュールは、MEDのコア (cMED)と呼ばれ、プロモーター領域で、Pol IIや基本転写因子TFIIB、TFIID、TFIIE、TFIIHに直接作用して、転写開始前複合体 (PIC)の形成を促進する。 本研究では、X線結晶構造解析を用いて、酵母の生存に必要不可欠なサブユニットすべてを含む、400 KDa、15サブユニットのcMEDの構造を可視化した。結晶構造からcMEDは、13のサブモジュールで構成されていることが明らかとなり、中でもMed14は、ユビキチン結合酵素に似たユニークなコンフォメーションをとっていた。得られたcMEDの構造をPICの低分解能電子顕微鏡像に当てはめることで、MEDとPol IIの新たな結合面が可視化されると共に、cMEDのフックサブモジュールが、Pol II Rbp1サブユニットのC端ドメイン (CTD)のリン酸化を促進する機構が示唆された。 |
問合せ先 | 膜分子複合機能学 塚崎 智也 (ttsukaza@bs.naist.jp) |