NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

セミナー情報

bHLH型転写因子FAMA-SCREAMによる2つの異なる細胞の分化メカニズム

演題 bHLH型転写因子FAMA-SCREAMによる2つの異なる細胞の分化メカニズム
講演者 白川 一 博士(ブリティッシュコロンビア大学 理学部 植物学教室 日本学術振興会 海外特別研究員)
使用言語 日本語
日時 2017年2月6日(月曜日) 10:00~10:45
場所 大セミナー室
内容 植物は動物とは異なる高度に特殊化した細胞を獲得し、その生存戦略を進化・発展させてきた。その中でも気孔を形成する孔辺細胞は、植物のガス交換と水分の蒸散と いう重要な機能を担っている。他の特殊化した細胞として、アブラナ科植物に特異的なミロシン細胞がある。ミロシン細胞は維管束周辺に分布し、その液胞にミロシナーゼと いう酵素を蓄積している。ミロシナーゼは基質であるグルコシノレートを分解し、忌避物 質を産生することで植物の生体防御機構に関与している。しかしながら、ミロシン細胞の発生を制御する分子メカニズムはほとんどわかっていなかった。 私は、これまでにミロシン細胞の分布がオーキシンによって制御されていること(1)、 bHLH型転写因子FAMAがミロシン細胞分化のマスター制御因子であることを明らかにした。fama変異体ではミロシン細胞は形成されず、逆にFAMAの過剰発現体では、植物体全体でミロシン細胞の分化が観察された。FAMAの相互作用因子であるSCREAM(SCRM)とSCRM2もミロシン細胞の形成に必須であることがわかった(2)。興味 深いことに、FAMAとSCRMsは孔辺細胞分化のマスター制御因子であることがすでに報告されている。以上の結果から、進化の過程でFAMA‐SCRMs複合体が転用されることでアブラナ科植物がミロシン細胞を獲得したと考えられる(3)。本セミナーでは、FAMASCRMs 複合体が2つの全く異なる細胞「表皮の孔辺細胞」と「内部組織のミロシン細胞」を作り出す転写ネットワークと今後の研究の方向性について議論したい。
問合せ先 構造生物学
箱嶋 敏雄 (hakosima@bs.naist.jp)

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