セミナー情報
葉緑体の多様な生存戦略:なぜ葉緑体がDNAを維持するのかを考える
演題 | 葉緑体の多様な生存戦略:なぜ葉緑体がDNAを維持するのかを考える |
講演者 | 坂本 亘 博士 (岡山大学資源科学研究所 教授) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2016年9月30日(金曜日) 15:00~16:00 |
場所 | バイオ大セミナー室 |
内容 | 葉緑体(プラスチド)は、今から10億年前にシアノバクテリアの細胞内共生に より生じた。進化の過程で殆どの遺伝情報を核に移行させたが、一部 を葉緑体 ゲノムとして保持し続けている。こうして共生により生じた葉緑体は核の支配下 となり、プラスチド分化能を得て植物の多様な機能を発揮する ことになった。 そのため、葉緑体の分化と光合成機能の維持には、核と葉緑体ゲノムが協調して 制御されなければならない。演者らの研究室では、葉緑 体分化の分子機構を明 らかするための研究を様々な手法で行っている。今回は最近明らかにした、葉緑 体ゲノムが組織特異的に分解される現象について 紹介する。 葉緑体はミトコンドリアと同様、細胞内で新たに形成されることなく分裂して 増殖し、次代へと伝わる。葉緑体あたりに複数コピーのゲノムを持って おり、 被子植物の多くは母性遺伝を示す。演者は母性遺伝に関連して「雄側(花粉)の オルガネラDNAが分解される」という仮説を立て、これを検証 するための研究を 行ってきた。その結果、オルガネラDNAが分解されない突然変異体の解析から DPD1と呼ばれるヌクレアーゼを明らかにした。 DPD1は葉緑体とミトコンドリア に共局在してオルガネラDNAを分解する。ところが、このDNA分解が母性遺伝を決 定する絶対的な因子ではな く、他の生長過程(葉老化)でもDNAを分解している ことがわかってきた。植物は生長に応じて複数コピーあるオルガネラDNAを分解 して再利用し ているようである。これらの結果を通して、植物がなぜプラスチ ドDNAを維持し続けるのか、について仮説を考えてみたい。 |
問合せ先 | 植物代謝制御 出村 拓 (demura@bs.naist.jp) |