セミナー情報
キメラ動物が導く生命科学研究の可能性
演題 | キメラ動物が導く生命科学研究の可能性 |
講演者 | 磯谷 綾子 博士(大阪大学免疫学フロンティア研究センター感染動物実験施設 特任准教授) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2016年4月27日(水曜日) 16:30~17:30 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 異なったゲノム情報をもつ細胞同士が混ざり合って1つの個体を形成するキメラ動物は、ES細胞を介したノックアウト・マウス作製などのツールとしてだけでなく、in vivoにおける細胞間相互作用に関する基礎研究にも役立つ実験動物モデルである。 これまでに私は、マウスの8細胞期の雄胚と雌胚を集合させて『雌雄キメラマウス』を作り、雌に由来するXX型の生殖細胞の多くは、精巣環境に影響を受け精原細胞様に分化して父型のゲノムインプリントを獲得するが、一部は精巣内で卵子様に分化し、母型のインプリントを獲得していることを見出した。つまり生殖細胞の性決定は、微小環境の応答により起こるが、その時にエピゲノムの変化まで制御されることを報告した。 次に私は、従来の集合法では胎性致死となっていたマウスとラットの『異種キメラ動物』を、胎盤に寄与することがないES細胞を胚盤胞にインジェクションすることで作出に成功した。さらに、胸腺を欠くヌードマウスの胚に野生型ラットES細胞を注入し、ラット胸腺様組織をマウス内に構築することも実現した。また、異種キメラの系は、新規ノックアウト・ラット作製にも応用できることを示した。 本セミナーでは、このような生命科学研究ツールとして、キメラ動物の新たな可能性について紹介し、議論したい。 今後は、『異種キメラ動物』を使ったアプローチを発展させ、組織・ボディサイズの調節メカニズムなどの生命現象の探求に加え、再生医療に繋がる臓器形成などの基礎研究を行う予定である。研究の面白さを学生に伝えることを忘れず、研究・指導の成果を社会に還元することも目標としたい。 |
問合せ先 | 構造生物学 箱嶋 敏雄 (hakosima@bs.naist.jp) |