セミナー情報
葉の器官サイズ制御に関する謎
演題 | 葉の器官サイズ制御に関する謎 |
講演者 | 塚谷裕一教授(東京大学大学院理学系研究科) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2015年11月27日(金曜日) 15:30~17:00 |
場所 | L12会議室 |
内容 | 植物の器官サイズは細胞数と細胞サイズの総和で決まっている。とくに有限成長型の器官である葉は、その大きさが遺伝と環境そして生理条件さえ同一であれば特定の範囲に収まり、それを構成する細胞数と細胞サイズも同様である。では葉を構成する細胞の数とサイズは、どのように決定されているのか。 ここに不思議な現象がある。遺伝的異常あるいは生理的な撹乱によって葉原基における細胞分裂が著しく低下すると、その細胞数減少による葉面積減少を補うかのように、個々の細胞が最終的に正常な株の葉に比べて大きくなるという現象である。これを補償作用(compensation)と呼ぶ。 この補償作用は、その原因によって異なる仕組みで起きているようであるが、興味深いことにangustifolia3 (an3)変異が原因できる補償作用は、細胞間シグナル伝達に依存して引き起こされ、少なくとも第1葉においては中肋で区切られる半身全体に細胞非自律的に伝わることが分かっている。一方、KRP2の過剰発現によって起きる補償作用は、細胞自律的な制御下にあり、液胞の肥大制御因子DET3の活性に依存している。このセミナーでは、この補償作用について近年積み上げられつつあるさまざまな断片的情報をつなぎ合わせ、葉が、そのサイズや形を、器官レベルで統合する仕組みについて現時点での理解を紹介したい。 また器官のサイズは、それを構成する細胞の倍数性によっても影響を受ける。最近私たちは、核相の倍加と細胞サイズの増加の関係について、これまで見過ごされていた盲点を発見したので、これについても紹介する予定である。 |
問合せ先 | 植物形態ダイナミクス 田坂 昌生 (m-tasaka@bs.naist.jp) |