演題 |
小分子RNAによるゲノムレベルの自己・非自己識別システム
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講演者 |
齋藤 都暁 博士(慶應義塾大学医学部分子生物学教室 准教授) |
使用言語 |
日本語 |
日時 |
2015年9月3日(木曜日) 13:00~14:00 |
場所 |
バイオサイエンス研究科 大セミナー室 |
内容 |
真核生物ゲノムは、レトロトランスポゾンの無秩序増殖の脅威から自己防
衛しつつ、自己の生存に必須な遺伝子群の発現を確保するシステムを持っ
ている。言い換えれば、ゲノムにおける自己(生存に必須な遺伝子群)と非
自己(レトロトランスポゾン)を明確に区別する分子機構を備えている、と言
える。
我々はモデル動物ショウジョウバエの生殖細胞において、Piwi‐interacting
RNA (piRNA)と呼ばれる小分子RNA群を発見し、レトロトランスポゾンの抑制
に機能することを提唱した。piRNA配列を解析した結果、10万種類以上存在
し、その多くがレトロトランスポゾンmRNAに対してアンチセンス鎖であること
を見出した。すなわち、piRNAは抑制を受けるレトロトランスポゾンの断片化
された配列情報である、と言える。さらに、培養細胞OSCを用いた生化学的
解析から、piRNA生合成や作用機構を解明した。その結果、ミトコンドリアな
どのオルガネラやエピジェネティックな制御機構が働くことを見出した。これ
らの事実は、ゲノム内の自己と非自己の区別には多段階の仕組みと蛋白
質因子が関わることを示している。
本セミナーではこのシステムを支える責任因子群の役割と分子機構を紹
介し、ゲノムという膨大な塩基配列情報からどのようにレトロトランスポゾン
が認識され、抑制されているのか、そのシナリオについて議論したい。 |
問合せ先 |
構造生物学 箱嶋 敏雄 (hakosima@bs.naist.jp) |