演題 |
植物自然免疫におけるネットワーク生物学 |
講演者 |
佐藤 昌直 博士
(慶應義塾大学大学院政策メデイア研究科/先端生命科学研究所) |
使用言語 |
日本語 |
日時 |
2015年8月5日(水曜日) 10:30~11:30 |
場所 |
大セミナー室 |
内容 |
高等真核生物は微生物を認識し、それを排除もしくは抑制するための免疫システムを持っている。植物の自然免疫に関わるシグナル伝達は古典的には「シグナル伝達経路」という概念のもと、各経路を独立に情報伝達する存在として還元主義的に解析されてきたが、植物自然免疫システムの振る舞いをこのアプローチで説明することは難しい。また、様々な植物ホルモンやセカンドメッセンジャー分子が植物自然免疫に関わることも明らかとなっており、植物自然免疫シグナル伝達全体には多くの遺伝子が関与することも明らかとなっている。
私はこの植物自然免疫シグナル伝達全体の姿を「植物自然免疫シグナル伝達ネットワーク」として捉え、その構造・性質を明らかにすることに取り組んできた。大別すると
(1) シグナル伝達ネットワークの状態を反映するデータとしてのmRNA発現プロファイル、特徴抽出・ネットワークモデリングアルゴリズムを用いた植物自然免疫シグナル伝達ネットワークトポロジーのモデリング
(2) シグナル伝達ネットワークのコアである4つのシグナル伝達経路すべてに関するmultiple (combinatorial) mutantsと統計モデリングによる植物自然免疫シグナル伝達の性質についての解析
を行い、各シグナル伝達「経路」の独立性は低く、むしろシグナル伝達「セクター」であること、これらシグナル伝達セクターはセクター間で拮抗する関係にあり、片方のみが活性化するスイッチのような情報伝達をしていること、それゆえ1遺伝子への阻害(変異体の使用)など植物自然免疫シグナル伝達ネットワークに対する単純な遺伝学的阻害実験では、植物自然免疫シグナル伝達ネットワークの制御構造を正しく理解することは難しいことが明らかとなった。
今回はこれらの研究について解説し、機能未解析遺伝子の機能推定へのネットワークモデリングの応用について議論する。また、2015年4月から慶應義塾大学先端生命科学研究所でスタートした私の研究グループが取り組んでいる「種間遺伝学的相互作用」との関わりも含め、紹介したい。 |
問合せ先 |
システム微生物学 森 浩禎 (hmori@gtc.naist.jp) |