セミナー情報
中枢神経系のパターン形成と神経前駆細胞の内因的分子機構
演題 | 中枢神経系のパターン形成と神経前駆細胞の内因的分子機構 |
講演者 | 笹井 紀明 博士(ロンドン大学眼科学研究所 リサーチアソシエイト) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2015年2月20日(金曜日) 16:00~17:00 |
場所 | L12会議室 |
内容 | 発生途上にある胚がどのように複雑精緻な構造を持った生命体へと変貌を遂げるのかを知ることは、生物学の大きな目的の1つである。私はこれまでに、主に中枢神経のパターン形成を対象として、この問題を明らかにすることを試みてきた。中枢神経、とりわけ脊髄神経管の発生においては、神経管の背腹軸に沿って感覚神経や運動神経、介在神経など様々な神経細胞が産出される。この分化決定とパターン形成にはBMP、Wnt、Sonic Hedgehog (Shh) などの分泌因子による誘導現象が重要な働きをするが、同時に神経前駆細胞の応答様式(コンピテンス)が変遷するため、前駆細胞は同じ誘導因子に対しても時期によって異なる反応を示す。例えば、2つの神経領域(底板細胞とp3領域)はどちらもShhにより分化するが、Shhに暴露される時期が異なるために別々の細胞へと分化するのである。私はこのコンピテンスの変遷とその分子機構を、主にニワトリとマウス胚、さらにその神経組織片を用いて明らかにしたので、本セミナーでその詳細を紹介し、議論したい。今後は、さらにコンピテンスの分子実体を追求するほか、Shhの独特の細胞内シグナル伝達様式にも焦点を当て、生体の高次構造構築との関係を明らかにする。将来的にはこれらの実験事実を生かして、繊毛病などの遺伝性難病の病因解明やその治療に向けた基盤技術の確立を目標にする。 【参考論文】 1. Sasai, N. et al., PLoS Biology (2014) vol.12, e1001907 2. Sasai, N. and Briscoe J. Wiley Interdiscip. Rev. Dev. Biol. (2012) vol.1, 753‐772 3. Dessaud, E. et al., PLoS Biology (2010) vol. 8, e1000382 4. Ribes, V. et al., Genes and Development (2010) vol. 24, 1186‐1200 |
問合せ先 | 構造生物学 箱嶋 敏雄 (hakosima@bs.naist.jp) |