セミナー情報
植物のオルガネラ間輸送システム:その進化と機能
演題 | 植物のオルガネラ間輸送システム:その進化と機能 |
講演者 | 上田 貴志 准教授(東京大学大学院 理学系研究科) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2012年11月28日(水曜日) 15:30~ |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 植物を含む真核生物には,膜により囲まれた様々なオルガネラが存在し,それぞれが独自のタンパク質や脂質の組成を有している.それぞれのオルガネラがその機能を正しく発揮するためには,各オルガネラではたらくタンパク質が正確に輸送され,局在することが不可欠である.単膜系オルガネラの間では,膜で囲まれた小胞や小管を介して物質の輸送が行われており,この輸送システムが,各オルガネラの機能発現を支えている.この輸送の仕組みは,道路や乗り物を介した輸送の仕組みになぞらえ,膜交通と呼ばれる.都市における交通網がそれぞれの歴史や目的に応じて独自の交通網を整備してきたと同様に,細胞内の膜交通網も,進化の過程で系統ごとに多様化し,独自の進化を遂げてきたと考えられる.植物においても,その独特の体制や生活環に応じた独自の膜交通網が備わっているものと考えられるが,そのような膜交通網がいかにして獲得され,植物の示す多様な高次機能にどのように関わるのかについては,これまでほとんど明らかにされていなかった.我々は,植物が進化の過程で独自に獲得した膜交通制御因子に注目し,それらの機能を明らかにすることにより,植物がいかにして新たな膜交通経路を開拓してきたのかを解明するべく研究を行っている.その結果これまでに,輸送小胞の形成に関わるダイナミン様分子や,輸送小胞の標的膜への繋留と融合に関わるRab GTPase, SNAREといった分子が,植物で独自の多様化を果たしていることを明らかにした.本セミナーでは,植物が進化の過程で構築した独自の膜交通システムについて,その分子機構と高次機能発現における役割を紹介したい. |
問合せ先 | 植物細胞機能 橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp) |