セミナー情報
神経細胞質封入体「斑点小体」の機能形態と神経細胞保護仮説
演題 | 神経細胞質封入体「斑点小体」の機能形態と神経細胞保護仮説 |
講演者 | 篠田 晃 教授(山口大学大学院医学系研究科高次神経科学領域) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2012年3月23日(金曜日) 16:00~17:00 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 斑点小体stigmoid body (STB)は、新規に見出された神経細胞質内封入体で、正常脳に広く存在し、性ステロイド受容体と共発現することが知られる。近年、ハンチントン病原遺伝子関連蛋白質 Huntingtin-associated protein(HAP1) が脳内STBに局在し、培養細胞へのその遺伝子導入によりSTBが誘導されることが明らかにされた。免疫組織化学法及びin situ hybridization法による解析から、STB/HAP1は正常の動物(ラット及びマウス)脳内で、視床下部及び辺縁系に広くかつ特異的に分布しており、特に視床下部のほとんどの神経細胞がこれを有していることが明らかにされた。また透過型電顕観察TEM解析及び高解像度走査型電顕SEM解析により、STBが顆粒線維状構造状を呈する0.5-3μmの神経細胞室封入体で、病的なアグリゾームとは異なること、小胞体関連の微小胞管構造から成り立つことが示された。GFP等のタグ標識HAP1遺伝子を培養細胞内に導入すると、STBが、0.5μm以下のユニットで細胞質に合成され、これが微小管を介して互いに結合を繰り返し、3−5μmの大きさのSTBに成長することが観察された。またHAP1は脳内でステロイド受容体と高頻度に共発現しており、作製したアンドロゲン受容体、エストロゲン受容体、グルココルチコイド受容体、ミネラルコルチコイド受容体等のプラスミドcDNAをHAP1cDNAと培養細胞内遺伝子二重導入を行うことにより、HAP1/STBがステロイド受容体のリガンド結合領域と結合することが明らかにされた。特にアンドロゲン受容体とグルココルチコイド受容体においては核内移行を制御しており、これを介しSTB/HAP1は脊髄球筋萎縮症由来のアンドロゲン受容体変異遺伝子による細胞死の抑制効果を有することが証明され、病態発生への関与が示唆された。さらに広い神経変成疾患への関与の可能性についても言及する。 |
問合せ先 | 神経機能科学 塩坂 貞夫 (sshiosak@bs.naist.jp) |