セミナー情報
遺伝学的の分子機構を解くための新しいアプローチ
演題 | 遺伝学的の分子機構を解くための新しいアプローチ |
講演者 | 渡邊 孝明 博士(基礎生物学研究所・多様性生物学研究室) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2012年1月17日(火曜日) 14:00~15:00 |
場所 | L12会議室 |
内容 | 遺伝子の数を増やすこと。この遺伝子増幅と呼ばれる現象は細胞がストレス環境に適応する重要な戦略の一つである。植物や昆虫では農薬や殺虫剤への耐性を獲得するため無毒化を促す遺伝子が増幅され、癌細胞では癌遺伝子や薬剤トランスポーターの遺伝子が増幅して癌悪性化や抗癌剤耐性に繋がる。また増幅は変異を受容できる遺伝子コピーを提供するため遺伝子進化の大きな原動力である。 こうした生物学的な重要性にもかかわらず、増幅の分子メカニズムには不明な点が多く残されている。この大きな要因として、遺伝子増幅は非常に低い頻度で起こるため解析が難しいこと、増幅産物の複雑な構造から増幅プロセスを知ろうとする従来の方法に限界があること、染色体改変や遺伝学的解析の可能なモデル生物での増幅系が殆ど存在しないこと、が挙げられる。そこで私達は発想を転換し、増幅を誘導できる染色体構造にデザインし増幅の可否を検証する、という新しいアプローチに取り組んできた。 本セミナーではこれまでの成果を元に、増幅の鍵となるゲノム構造として注目しているdouble inverted repeatとその構造から誘導されるダブルローリングサークル複製による高速な増幅を中心に紹介する。またその分子機構に迫るため行っている遺伝学的解析等の現状についても考察する。最後にこの増幅機構の研究が癌遺伝子の増幅や遺伝子進化の理解にいかに貢献し得るかについても私見を述べたい。 |
問合せ先 | 原核生物分子遺伝学 秋山 昌広 (akiyamam@bs.naist.jp) |