セミナー情報
RNA-タンパク質相互作用を利用したシンセティックバイオロジー
演題 | RNA-タンパク質相互作用を利用したシンセティックバイオロジー |
講演者 | 井上 丹 教授(京都大学大学院 生命科学研究科 遺伝子動態学分野研究室) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2011年11月29日(火曜日) 16:00~17:00 |
場所 | L12会議室 |
内容 | 生物は、比較的限られた種類の分子を組み合わせるだけで、驚くべき高度な機能を発揮する精緻なシステムをつくりあげている。材料となる生体分子の構造と機能は、巧妙に制御され、それらは高度な分子認識と自己組織化の能力を持つ。20世紀後半、「DNA二重らせん」の発見以降、これらについて分子レベルでの解析が加速的に進行し、現在までに膨大な量の分子生物学・生化学の研究成果が蓄積されている。2000年代前半、これらの成果を基盤として、生体内で機能する人工分子のデザイン・合成をおこない,その人工分子を用いて人々に貢献することをめざす「シンセティック・バイオロジー (Synthetic Biology)」 とよばれる研究分野が、アメリカを中心に発足した。生体分子を天然から抽出、または人工的に創成し、それらを独立したユニットととらえて物理的に組み合わ せ、細胞機能を自在に制御するシステムを創成すること、さらには、それらを全く新しい医療技術などに応用することは、この新分野の研究目標の一つである。 シンセティック・バイオロジー分野における新しい研究のスタイルとして、我々は天然に存在する「RNA-タンパク質複合体(RNP)」をもとに人工RNPをデザイン・構築した。これらによる、ヒトの細胞の運命決定など、高度なレベルでの細胞の認識や細胞機能の制御についてお話したい。 この研究の主要な成果として、(1) RNPを活用したヒト細胞内で機能する人工翻訳制御システムの構築に成功 (Nature Chemical Biology, 6, 71–78 (2010) )、これを利用し、ヒト細胞固有のシグナル(タンパク質分子)を検出、その発現量に依存して細胞の運命(生死)を決定するシステムの構築 (Nature Communications, 2, 160- (2011))。(2) RNPを活用したナノ構造体の設計・構築、ヒト細胞の特異的な認識、標識など複数の機能を備えた多機能性RNPを分子デザインする技術の確立がある (Nature Nanotechnology, 6, 116-120. (2011))。 |
問合せ先 | 生体機能制御学 佐藤 匠徳 (island1005@bs.naist.jp) |