セミナー情報
細胞と細胞集団に自己組織化する振動と波
演題 | 細胞と細胞集団に自己組織化する振動と波 |
講演者 | 澤井 哲 准教授(東京大学 大学院総合文化研究科) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2011年10月27日(木曜日) 17:00~18:00 |
場所 | L12会議室 |
内容 | 動物でも植物でもさらには菌類でもない、そんな生き物にも多細胞体の生活史があることを忘れていませんか?社会性のアメーバ・細胞性粘菌では、真核生物の発生に共通して見られる分子レパートリーを総動員して、独自の形態形成が展開されます。そこには、真核生物の共通祖先が獲得したであろう、細胞接着、走性、細胞間シグナリング、細胞分化といった素過程をもとにして、実に多様な構造化があり得たことを伺い知ることができます。 細胞性粘菌は、一様に未分化な細胞集団から出発して、柄と胞子からなる子実体を作りあげます。動物の初期胚のように極性があらかじめ与えられていないにも関わらず、オーガナイザー的な役割をもつ細胞が出現し、サイクリックAMPの振動と波の自己組織化と、走化性によって多細胞体制を構築します。本セミナーでは、時空間的に展開する細胞内、細胞間シグナリングの定量化や数理モデル化を、分子遺伝学的な解析と、ロボットを用いた変異株スクリーニングなどから浮かびあがってきた、パターン形成の機構について紹介します。蛍光タンパクとFRETを利用したcAMPの計測、PIP3などのリン脂質シグナリング、F-アクチンの同時可視化などについても触れ、生物の自発性と自己組織化を利用した情報処理の特性について議論します。 参考文献 [1] T. Gregor, K. Fujimoto, N. Masaki and S. Sawai (2010) Science, 328, 1021-1025. [2] S. Sawai, X.-J. Guan, A. Kuspa and E.C. Cox (2007) High-throughput analysis of spatiotemporal dynamics in Dictyostelium, Genome Biology 8, R144. [3] S. Sawai, P.T. Thomason and E.C. Cox (2005) An autoregulatory,circuit for long-range self-organization in Dictyostelium cell, populations. Nature 433, 323-326. [4] 澤井哲 「粘菌のcAMP振動と波」細胞工学26 (7), 759-765秀潤社 2007年 |
問合せ先 | 神経形態形成学 稲垣 直之 (ninagaki@bs.naist.jp) |