セミナー情報
Wnt5aの機能とその異常による病態
演題 | Wnt5aの機能とその異常による病態 |
講演者 | 菊池 章 教授(大阪大学医学系研究科・医学部) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2011年10月19日(水曜日) 15:30~17:00 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | ショウジョウバエの遺伝学に端を発したWnt(ウイント)の研究は、発生生物学や腫瘍医学的アプローチによっても解析が進み、多様な研究領域を包括してきた。Wntは分泌蛋白質で、線虫やショウジョウバエからヒトに至るまで生物種を越えて保存されており、動物の発生に必須である。個々の細胞からみれば、Wntは細胞の増殖や分化、極性、運動の制御に重要である。また、胚性幹細胞や組織特異的幹細胞の未分化能維持や運命決定にWntが関与することが明らかになっている。また、Wntは細胞機能制御に重要な役割を担うことから、そのシグナル伝達機構の異常が種々のヒト疾患の病態と関連する。 Wntはヒトやマウスのゲノム上に19種類存在する。Wntが細胞膜受容体に結合することにより活性化される細胞内シグナル伝達機構には、(1)β-カテニン経路、(2)平面細胞極性経路 (PCP経路)、(3)Ca2+経路の3種類が存在する。(2)と(3)はあわせて、β-カテニン非依存性経路とも呼ばれる。β-カテニン経路は主として細胞の増殖と分化を制御し、その異常は発癌や骨疾患と密接な関係にある。一方、β-カテニン非依存性経路は細胞骨格を調整して細胞や組織の運動や極性を決定する。β-カテニン非依存性経路を活性化する代表的リガンドであるWnt5aの過剰発現は癌の浸潤、転移を伴う悪性化と相関することが明らかになってきた。本セミナーでは、Wnt5aが如何にしてシグナルを伝えるのか? Wnt5aは如何にして細胞運動を制御するのか? Wnt5aの分子標的薬の候補になるのか? 等について、私共の成果をもとに討論したい。
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問合せ先 | 分子情報薬理学 伊東 広 (hitoh@bs.naist.jp) |