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奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

Research 研究成果の紹介

奈良先端科学技術大学院大学と月桂冠が共同研究
酵母の成長スイッチ「TORC1」が
清酒の香味に与える影響を解明(第二報)
―TORC1 の脱抑制が吟醸香とリンゴ酸の増加に寄与—

奈良先端科学技術大学院大学と月桂冠が共同研究
酵母の成長スイッチ「TORC1」が
清酒の香味に与える影響を解明(第二報)
―TORC1 の脱抑制が吟醸香とリンゴ酸の増加に寄与—

 国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学(学長・塩﨑一裕、奈良県生駒市)の渡辺大輔准教授と、月桂冠株式会社(社長・大倉治彦、本社・京都市伏見区)総合研究所は共同研究により、酵母の成長を司る司令塔として働く「TORC1(トークワン)」の抑制因子を操作することで、日本酒の吟醸香とリンゴ酸が増加することを明らかにしました。今回の「第二報」では、遺伝子解析等を通じて、TORC1 の脱抑制(常に作動し続ける状態)が、これらの香味成分の増加に直接関与していることを科学的に裏付けました。

【背景:これまでの研究成果(第一報)】
 清酒酵母において、成長スイッチである「TORC1」はエタノール発酵に重要な役割を担っています。両機関は 2025 年 10 月の共同発表(第一報)において、TORC1 を抑制する因子の遺伝子(NPR2、NPR3)を破壊した酵母を用いると、吟醸香(酢酸イソアミル)とリンゴ酸が劇的に増加することを見出していました。しかし、これらの成分増加が、実際に TORC1 の脱抑制によるものなのか、その詳細なメカニズムは不明のままでした。

【研究の内容と結果:遺伝子レベルでの TORC1 脱抑制を実証】
 今回の研究では、最新の遺伝子解析手法(RNA-Seq)を用い、NPR2 遺伝子破壊酵母の遺伝子発現を精査しました。その結果、TORC1 が活性化することで増加する遺伝子群(リボソーム関連等)の転写が顕著に促進されており、遺伝子レベルで TORC1 が脱抑制されていることが示唆されました。
 また、TORC1 阻害剤(ラパマイシン)を用いた試験では、阻害剤処理によって香味成分の生産量が低下することが確認されました。これらの結果から、TORC1 の脱抑制こそが、吟醸香とリンゴ酸の高生産を引き起こす重要な要因であることが強く示唆されました。

【今後の展望】
 本研究により、制御因子である TORC1 をターゲットとすることで、理想的な酒質の設計が可能になることが示さ
れました。今後は、さらに詳細な制御経路の特定を進め、バイオテクノロジーの力を活用した新しい実用酵母の育種
法開発を目指します。

【補足用語】
・TORC1(トークワン): 栄養やストレスに応答して細胞の成長や代謝を制御する司令塔のような因子。
・RNA-Seq: 遺伝子発現を網羅的に解析する手法。どの遺伝子がどれくらい活性化しているかを評価する。
・ラパマイシン: TORC1 の働きを特異的に抑制する薬剤。

【学会での発表】
 今回の研究成果は、日本農芸化学会 2026 年度大会(会期:2026 年 3 月 9 日~12 日)で発表しました。
学会名:日本農芸化学会 2026 年度大会(主催︓公益社団法人日本農芸化学会)
日時: 2026 年 3 月 11 日 11 時 00 分~11 時 12 分
会場: 同志社大学 今出川キャンパス 良心館
演題: 清酒酵母 TORC1 抑制因子破壊株における 吟醸香とリンゴ酸高生産機構の解析
発表者: 〇浅井良樹 1、戸所健彦 1、根來宏明 1、堤浩子 1、赤坂直紀 2、両角佑一 2、渡辺大輔 2、石田博樹 1(1月桂冠(株)・総合研究所、2奈良先端大・バイオ)(○印は演者)

【微生物インタラクション研究室】

研究室紹介ページ:https://bsw3.naist.jp/courses/courses313.html
研究室ホームページ:https://bsw3.naist.jp/microbial_interaction/

(2026年03月27日掲載)

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