卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
阿部(富澤) 香織 さん
- 大塚製薬株式会社 徳島研究所 安全性研究センター
- 1997年度(修士) 細胞構造学
『実証できた』という興奮を実験室で追い求める日々を送っています。
私は修士課程を奈良先端大で過ごした後、他大学の博士課程へと進み、博士取得後に製薬企業の研究所に就職しました。
大学4年次は環境生物学の研究室に所属しており、分子生物学の知識は教科書レベルでは知っていても、実際には学生実習程度にしか経験はありませんでした。このような学生を一から教え込むことについては、先生方からすれば大変なご苦労をされたのではないかと想像しております。
大学4年次から将来は研究職に就きたいという漠然とした希望がありましたが、その思いがさらに強くなったのは今思えば奈良先端大での在籍時だったように思います。仮説を立て、それを実証するためにトライ&エラーを繰り返しながら地道に実験を行うという繰り返しの中で、なかなか結果がでない焦りを感じていた日々を懐かしく思い出します。結果として自分の予想が正しかったという証拠が得られ、深い達成感を感じたのはここ奈良先端大での実験でした。周りのひとにとってはどんなに些細なデータであっても (特に先生方にとっては当然予想していたデータだったとは思いますが)、当時の私にとっては『予想したこと(仮説)が実証できた』という興奮を得るのに十分な体験でした。このときの興奮が私の原点になっているように思います。
現在は製薬企業で新薬候補化合物の安全性評価研究をしております。医薬品ですから当然薬効が必要ですが、それと同時に安全性の高い薬を創出することが求められます。日々の業務は興味あるテーマをとことん追求するという学生時代の研究生活とは違い、専攻や興味の有無に関わらず、次から次へと様々なテーマの難問が提示されて解決や判断を求められることの繰り返しです。しかしながら、仮説を立てて実証するという根本は変わりなく、今でも『実証できた』という興奮を実験室で追い求める日々を送っています。学生時代と最も大きく違うのは、得られた興奮に対して対価(開発に与えるインパクト等)を求められることでしょうか。その他には、規制当局のガイドラインや基準に適合した形で科学データを取得して報告書にまとめる必要があるため、学術論文の纏め方とは別の視点が要求される点です。この苦労は数年後には患者様のもとに薬が届いて嬉しい声が聞けた! という興奮に繋がるものと確信しております。
卒業後も奈良先端大には先生にご指導頂くために何度もお邪魔しており、大変お世話になっております。また、奈良先端大には最先端の研究でご活躍されているOB&OGがたくさんおられます。つい先日も、ある測定方法について検索していたところ、奈良先端大在籍時にお世話になった先輩のお名前が挙がってきました。その後すぐに連絡をとり、メールや電話でご指導を受けて、無事に測定を実施することができました。奈良先端大の人財ネットワークは私の財産となっています。
これからも学生時代に学んだ知識と培った人財を大切にしながら、『実証できた』という興奮を追い求めていきたいと考えています。
【2010年07月掲載】