NAIST 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域

研究室・教員

卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -

石田 喬志 さん

  • 独立行政法人 理化学研究所 横浜研究所
    (→熊本大学 先端科学研究部 准教授)
  • 2007年度(博士) 植物遺伝子機能学
石田 喬志さんの近況写真

横浜鶴見の理化学研究所植物科学研究センターに勤務し始めてから早いもので2年が経ちました。奈良先端大在学時には橋本隆教授のもとでシロイヌナズナの微小管の研究を行っていましたが、現在は基礎科学特別研究員(ポスドク)として、細胞分裂を伴わずに染色体を増幅する核内倍加という現象に着目して発生生物学の研究に力を注いでいます。

大学4年生の春、当時所属していた研究室の教授と進路について相談を行い「研究者として生きてゆきたいなら良い場所で修業を積むことが大切」とのアドバイスとともに奈良先端大を紹介していただきました。恵まれた研究環境と優れた実績を持つ先生方が集まっていることに非常に驚いたことを覚えています。当時の自分は応用研究と基礎研究のどちらにも興味があり方向性を決めかねていたのですが、橋本先生の研究室で出会った微小管の研究が、基礎研究はたしかに地味で分かりにくい部分もあるけれどとても面白く、そして何よりも将来的な科学の発展のために重要であるということに確信を持たせてくれました。

奈良先端大の豊富な実験設備が私の研究にとっては大きな推進力となりました。私の学位研究では最終的に顕微鏡観察が大きな意味を持ち、学位論文を書き上げるまで3種類の共焦点レーザー顕微鏡のほか透過式電子顕微鏡など多数の顕微鏡を使い分けてデータを取っています。これだけの高度な設備を一か所に保持している研究所は世界を探してもなかなかありません。また、奈良先端大には多くの大学院生が在籍しているということも非常に良かったと思います。同じ研究室内に多くの博士課程の学生が在籍していたため、活発な議論や研究報告などを通じて多様な知識を得られたことで研究者として鍛えられました。これに加えて、私の学年では特に多くの学生が博士課程に進学し植物系だけでも十人以上が在籍していました。彼ら彼女らとは互いに競い合い励まし合いながら3年以上の期間を過ごし、多くのメンバーが奈良先端大を去った今でも交流が続いているばかりか、この会を中心に学会等で交友関係が広がることもありました。素晴らしい仲間を得られたことも奈良先端大における大切な思い出になっています。

最近の日本の科学の世界では応用の道が見えにくい研究は敬遠される傾向にあると言われています。私自身の周囲でもこのような風潮を感じることがあるのですが、それでも何十年もかけて評価されノーベル賞を受賞するような基礎的な研究があるように自分の研究も将来に向けた重要な布石となると信じて取り組んでいます。奈良先端大のバイオサイエンス研究科は日本のバイオ系大学院の中でも特に高いレベルで基礎的な研究を行っている研究所と言われています。今後も世界に驚きをもたらすような研究成果とともに優秀な研究者を育てる大学院であり続けてほしいと願っています。

(写真:後列右から3人目が筆者)

【2009年07月掲載】

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