研究室・教員

『色々な財産を与えてくれたNAIST』

私は現在Thermo Fisher Scientificという会社で、フローサイトメトリーの技術者として、関連する製品の開発や、お客様の研究をサポートする仕事に従事しております。現在私が所属しているチームは日本人が私のみで、ドイツ、スペイン、アメリカ、中国、韓国と様々な地域、国の人と共に仕事をしているのですが、科学という共通言語で日々を楽しく過ごしています。自分でも現在の立ち位置が信じられないのですが、思い返してみると奈良先端大に入学した事がきっかけで手に入れた様々なご縁で今の自分があるのだなと実感しています。

私が奈良先端大を知ったきっかけは、大学生時代友人に奈良先端大のオープンキャンパスへ誘われたことがきっかけでした。当時私は大学院進学をあまり意識しておらず、都内の大学に通っていた私は、旅行のきっかけとして友人に付いて行ったついでの奈良先端大見学でした。しかし、そこで出会った方々のお話しの楽しさや、研究紹介にだんだんと惹かれていき、気付いた時には入試を受け、2008年に稲垣先生の主催する現在の神経システム生物学研究室に所属することになりました（当時は伊東研究室）。稲垣研では、神経の形態形成に関わる分子の挙動と細胞の動きに着目した研究テーマの基、顕微鏡を中心に様々な技術を学ばせて頂きました。その研究の中で、パルスレーザーで細胞を操作する実験系を行うことになりました。隣の物質創成科学研究科の細川研究室の装置を使用させて頂くことになり、このご縁がきっかけで、私はバイオサイエンス研究科を卒業後に物質創成科学研究科で職員として所属し、新しいセルソーターを開発するプロジェクトに携わらせて頂くことになりました。そして、そのプロジェクトがきっかけになり東京大学医科学研究所で研究員をさせて頂きました。さらに面白いのは、ちょうどプロジェクトが終わる時期にThermo Fisher Scientificで先に働いていた奈良先端大の同期からフローサイトメトリーの技術者を探しているという話しを伺い現在の職場にご縁を頂きました。

現在の職場での業務は、フローサイトメトリー関連を中心に日本国内の弊社試薬ユーザー様の実験トラブルシュートや試薬のご提案を中心に、国際チームで世界中の研究者達と実験に使用する抗体のコンサルティングや、試薬の開発を行っております。奈良先端大で培われた基礎的なバイオサイエンスの知識はもとより、ディスカッションしたり考察したりする能力はとても現在の仕事に活かされております。また、経験させて頂いたUCデイビスへの短期間の留学や国際的なワークショップで経験させて貰った外国人研究者達とのコミュニケーションの経験は、現在の職場で海外同僚達と円滑にやり取りができる上で最大限生かされている糧であったと今しみじみと思います。

学業や研究面以外でも現在も活きている奈良先端大で手に入れた財産はたくさんあります。その中の１つで、私は在学中に市民や子供達と共にサイエンスを楽しむサイエンスコミュニケーション団体NASC（NAIST Science Communicators）を友人達と立ち上げました。当時は手探りで始めたこの団体ですが、ここで行った科学実験教室やサイエンスカフェの運営の経験が社会人の今も、会社で実施する科学実験教室や趣味の活動のイベントへの出展等の場で活かされており、かけがえのない経験となっております。

そして、何より忘れていけないのは奈良先端大で手に入れた仲間達です。私は学生時代奈良先端大の寮に住んでおりました。当時こそは監獄だのなんだの悪態をついていたものですが、今思い出すと、研究棟の仲間達と朝まで飲み明かしたりしながら研究やその他もろもろについて語り合って過ごしたあの日々は信じられないくらい楽しい日々だったなと思い返されます。そして、奈良先端大を出て10年以上たった今現在も、東京方面に出てきた仲間達と数か月に１度は集まっては飲んだりしています。また仕事柄もありますが、仕事をしていて元奈良先端大生という方にお会いする事も多々あり共通の話題で盛り上がる事も出来ます。
在学中はあまり意識していませんでしたが、奈良先端大で過ごした手に入れた経験や人間関係は、卒業してしばらくたっても仕事上の繋がり等でも実感することがあります。今はまだ明確な目標等はなく、目の前の興味にがむしゃらになっている人も気付いたらたくさんの財産を手に入れているのが奈良先端大生活だと思います。これから大学院受験を考えている人などいらっしゃいましたら、奈良先端大は様々な地域やバックグラウンドの人達も集まる面白い大学院ですのでお勧めです。

【2023年05月掲載】

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