卒業生の声 - 拡がるNAIST遺伝子 -
村田 純 さん
- 公益財団法人サントリー生命科学財団 研究員
(→公益財団法人サントリー生命科学財団 主席研究員) - 2001年度(博士) 植物遺伝子機能学
面白いこと、新しいこと、奈良先端大で始めよう
私は今、公益財団法人サントリー生命科学財団で、植物で働く低分子化合物の新しい機能に関する基礎研究に従事しています。偶然にも一昨年に研究所ごと奈良先端大の近くに移転し、奈良先端大との不思議なご縁を感じています。「NAIST遺伝子」での2度目の自己紹介になります。前回は留学中でしたので、今回はその後の経緯についてご紹介します。
私にとってカナダ留学は、研究、生活両面で非常に有意義でした。研究分野を植物代謝に変えたことに加えて、異なる風習や言葉の違いに当初戸惑うことも多かったですが、素晴らしいボス(Vincenzo De Luca博士、Brock大学)と良い仲間に恵まれ、楽しい時間を過ごしました。むしろ帰国のタイミングを計るのが難しかったです。現地採用で、日本への帰国時期を留学前から計画的に決めてはいなかったこともあります。研究の成果が出始め、ようやく帰国を決意した時には、留学して4年が既に経過していました。案の定、就職活動は簡単なはずがなく、インタビューにすらなかなかたどり着けませんでした。困り果てて橋本先生にご相談した結果、プロジェクト付きのポスドクとして雇って頂きましたが、そうでなければもっと長い間カナダに滞在していたかも知れません。帰国してから改めて就職活動をして、幸運にも現在のポストを得ることができました。留学すると、帰国の際の就職活動が確かに大変かもしれません。けれども、ずっと日本で働きさえすれば就職が保証されるわけではありません。自分が未経験の新しい研究分野に取り組む場合は、スキルや経験が異なることが海外ではむしろ重宝されるケースが多いように思います。私は奈良先端大で学んだ分子生物学や組織培養技術に加え、留学によってタンパク質の精製、低分子化合物の分析からラボの外での日々の生活を含めて新しいことを経験し、視野やスキルの幅を広げることができました。これは、様々な研究分野の知見や分析技術を総動員する現代の生命科学研究に携わるうえで、とても大切なことだと、今実感しています。
研究分野も言葉も文化も違う、海外の新しい研究環境に(無謀にも)飛び込むことができたのは、学部からの進学者がいる大学にはない、自由かつフラットな雰囲気の奈良先端大で、「面白いと思ったら何でもやってみよう」という姿勢を学んだからだと思います。平成30年度から情報科学研究科、物質創成科学研究科と併せてひとつの研究科になると聞いています。在学生の方には、相互の顔が見えやすい、小回りが利く、など規模が小さい奈良先端大のメリットを最大限に生かして、専門領域間の垣根を軽々と超えた、自由で新しい科学を創っていただきたく思います。情熱をもって何かに取り組むことはそれ自体貴重な経験となり、卒業後もきっと皆さんの糧となります。NAISTは、面白いこと、新しいことに挑戦する皆さんにとって最高の環境を与えてくれることでしょう。
村田純さんの過去の記事はこちら
http://bsw3.naist.jp/graduate/index.php?id=22
【2017年10月掲載】