セミナー情報
軸索誘引分子Netrin-1による神経軸索ガイダンスの分子機構
演題 | 軸索誘引分子Netrin-1による神経軸索ガイダンスの分子機構 |
講演者 | 馬場 健太郎 博士 (奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域 神経システム生物学研究室 博士研究員) |
使用言語 | 日本語 |
日時 | 2019年4月23日(火曜日) 10:00~10:45 |
場所 | 大セミナー室 |
内容 | 拡散性の化学物質により調節される細胞移動は走化性と呼ばれ、
神経回路網形成のための軸索ガイダンスにおいて重要な役割を果 たす。この軸索ガイダンスに中心的な役割を果たすのが軸索先端 に存在する成長円錐である。成長円錐が誘引性および反発性の 軸索ガイダンス分子のシグナルを受容することで、軸索の伸長方 向を決定し伸長方向に向かうための推進力を生み出すと予想され ている。しかしながら、どのように成長円錐が軸索ガイダンスのた めの推進力を生み出すのか、その分子機構はよく解っていない。 先行研究により、Shootin1aが逆行性移動するアクチン線維と細胞 接着分子L1の間を連結するクラッチ分子として機能することが示さ れた。そこで、我々はShootin1aに注目し軸索ガイダンスの分子機 構を明らかにすることを目指した。 生化学的相互作用解析、細胞移動のための推進力の測定、マイ クロ流体デバイスを用いた軸索ガイダンスアッセイなどの実験によ り、軸索誘引分子Netrin‐1によって引き起こされるShootin1aのリン 酸化によりShootin1aとアクチン結合分子Cortactinとの相互作用 およびShootin1aとL1との相互作用が促進されることが解った。また、
Shootin1aとL1の相互作用を阻害した場合ではNetrin‐1による推進 力の促進が抑えられ、Netrin‐1による軸索誘引が阻害されることが 解った。さらに、Netrin‐1の僅かな濃度勾配により成長円錐内の Shootin1aが非対称にリン酸化され、この非対称なShootin1aのリン 酸化を阻害した場合ではNetrin‐1による軸索誘引が阻害された(1, 2)。 以上の結果により、我々は、僅かなNetrin‐1の濃度勾配により成 長円錐内のShootin1aが非対称にリン酸化されることで、方向性を 持った成長円錐の推進力が生じ、軸索ガイダンスが引き起こされ るという分子機構を提唱した。本発表ではこれらの結果の詳細に ついて述べるとともに、今後の展望について議論したい。 【参考論文】
(1)Kubo and Baba et al., J. Cell. Biol., 210, 663‐676 (2015) (2)Baba et al., eLife, 7:e34593 (2018) |
問合せ先 | 植物細胞機能 橋本 隆 (hasimoto@bs.naist.jp) |