研究成果の紹介
バイオサイエンス研究科の酒井大輔博士研究員が第23回高遠シンポジウムで「優秀ポスター賞銀賞」を受賞
分子発生生物学研究室の酒井大輔博士研究員が8月19日-20日に長野県で開催された、第23回高遠シンポジウムで優秀ポスター賞銀賞を受賞しました。優秀ポスター賞は、シンポジウム参加者全員の投票により上位3名が選出されます。
受賞のコメント
23回目と歴史のある高遠シンポジウムで優秀ポスター賞を受賞することができて大変光栄です。このシンポジウムには分子生物学から細胞生物学、発生生物学等と様々な分野の方々が参加されます。他分野の方々からも評価をいただき受賞できたことは、自分の研究が広く受け入れていただいた結果と考え、より感慨深いものとなりました。今後も様々な分野に影響を与えられるような研究を目指して努力していく所存です。また、この研究をおこなうにあたりご協力およびご助言いただいた皆様に、この場を借りて感謝の意を表します。
受賞時の発表内容
トリーチャーコリンズ症候群は先天性の顔面奇形を生じる遺伝病で、重篤な場合は摂食や呼吸不全により死に至ります。しかし、この病気の発症メカニズムについてはほとんどわかっていません。我々はトリーチャーコリンズ症候群の原因遺伝子であるTcof1のノックアウトマウスをモデルとして、顔面奇形発症メカニズムの解析をおこなってきました。今回、機能が不明だったTcof1が新規のDNA損傷修復遺伝子であることを突き止めました。Tcof1は胚発生の初期に高頻度に起こる酸化による染色体損傷を修復し、顔面の骨へと分化する神経堤細胞を細胞死から保護する働きを持つことを明らかにしました。さらに、胚発生期の酸化状態を抗酸化剤投与により減少させることで、Tcof1欠失による顔面奇形誘導を抑制することに成功しました。近い将来、抗酸化剤の母体への投与がトリーチャーコリンズ症候群の出生前治療法の開発に応用できることが期待できます。
(2011年10月05日掲載)